光明寺設計物語【2017.03.19~】お彼岸

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携わるお寺、その宗派でのお寺の設えは理解できる。
がしかし、どう使われているのかはわからない。
住宅に例えるなら、リビングやキッチン、寝室など
諸室は基本的に同じではあるけれど、各々に違う。
これが檀家様、門徒様方々があってこれまでがあり、
その中でこのお寺らしい仕組みがあるはずだった。
これを理解出来なければ、合理性も勝手も導けない。

聞き取りで理解出来る部分と出来ない事がある。
クライアントの言葉を建築の言葉に置き換えるには、
言葉を実際に確かめる必要がある。

私の使う建築の言葉が正しく伝わる事はない。
勉強し、経験し、実践して得た言葉は、等しく
訓練した人となら補足すれば共有は可能だろう。

例えば、「広い」「明るい」「居心地」などは、
売り文句では常套ではあるけれど、漠然として
実は何も言い当てず、その響きのみが一人歩く。

設計の当初は聞き役、そして実態の把握に努める。

と言うことで、お彼岸という先ずは最初の機会、
二日に渡ってお寺に滞在する事に決めた。
きっと、迷惑だったに違いない。忙しいのに、
余計な人が、ただ、居るのだから。

ただ、そこは全く遠慮せずにズケズケと全てを
見せて頂く。隠されたり、格好つけられては困る。
ひたすら、観察を試みる。

特別な催しがあるわけではなく、お参りに
数多くの方がみえられる。納骨堂は大忙し。
何時ごろ檀家さんが来られ、お寺はどう応対を
するのか等を眺めて過ごす。


時間を見て、お寺の外も観察してみた。

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国道から正面、お寺の本堂を眺める。
綺麗に収まっている。

 

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ただ、人通りよりも車通りの多い道、この角度で
眺める具合となるので、実は隣地の建物に隠れ、
あまり良くは見えない。

帯広出身の若坊守に結婚するまで知らなかったと、
お聞きし、びっくりしたけれどなるほどとも思った。

 

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通常はこの交差点が敷地の全景を眺めるポイントに。
ただし、オセロの一角、特に重要な交差点の角に
隣地の建物があり、これでお寺が全て消えてしまう。
この交差点からの見え方、交差点の状況は後に、
やはり重要なポイントになってくる。

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周辺にも足を伸ばしてみた。直ぐ近くに
音更川が流れている。堤防に登ってみると、
川の土手は気持ち良い広がり。
しかし、川はかなり遠くにあるなー

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敷地の北側にも用水路があるのだけれど、音更川
反対側にも川筋がある。今は囲われて真っ直ぐに
流れているものの、そちこちに川筋があり、
これが町並み形成に大きく影響をしている様子だ。

敷地だけを眺めると、必ず何かを間違えてしまう。
敷地は公図、測量図があり、CAD図面にはしている
ものの、実際にどう風景の中にあるのかを知るには、
実際に見て、感じるしかない。理解を深めるには、
周囲を歩き、どういう光景の中に位置するのかを
知りたいと思う。
ただ、歩くとどこも結構な距離があった・・・
国道だけを眺め、車での移動を前提とするのなら、
その沿線沿いには数多くのお店が軒を連ねている。
けれど、人が歩くスケールではそうそう展開しない、
距離感がある。歩いて知る距離感は実体験。

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この機会に出会えた貴重な図面。
坊守があれこれ探して下さり出会う。
本堂の立面図だ。
平面図は単線図しかなかったものの、
立面は気合の入った図面で印象深い。

本堂をどう処すか、これは後に判断の
分かれ目となる。