光明寺設計物語【2017.05.24】現地広域調査

建築の方針を先に定めた。決定ではないものの、一先ず
得られた計画案を温め修練させようと考えた。プランは
スケール上げて「本堂」「納骨堂」「庫裡」の大別から
例えば「庫裡」なら居間や寝室などを問う様に具体的な
打合せがはじまっていた。

大きな問題は予算となっていた。

つまり、建築を具現出来るか否かの切実な問題。
規模がオーバーなら予算はショートしてしまう。
この見極めが出来なければ全てが無に帰す。
設計において特に大きなハードルだ、これは何時も。

設計見積もりは目安に出来るものの、確実ではない。
加えて、木造と考え進めているものの実況を把握する
必要がある。一般的には木造・・・住宅規模。
大規模なケースではどう予算出来るのか?
施工者による概算見積もりが欲しかった。

これは素直に告白する。

前年に竣工した帯広の住宅の施工者に相談をする。
一つの設計を通じ、意思疎通が確実に出来る関係、
信頼できる概算を期待出来る。
施工者は入札という条件はあった。本当は特命に
する方が安心で確実であると思うものの、
今のご時勢、なかなか読みきれない。
規模、仕様、内容は一般的ではない。極普通の仕様は
想定出来るけれど、そういう設計はしていない。
具体的に施工者の意見を聞く機会は貴重だ。
これはどの業者でも良いわけではない。
融通することは無い条件で相談をしていた。

施工者にとっては営業せずに本見積もり参加の機会を
得られる事がメリットになる。
この時はまだ、この先の業者選定は出来ていなかった。
設計者推薦の一社に加える事、これはクライアントに
相談をした上で。


・・・計画が進めば、実に脂っこい話にも至る。
そして、より具体的に計画を進める事になる。
設計はこの頃から「庫裡」の在り方に幾つもの
問題を抱える事になるのだけれど、私としては、
敷地周辺の環境をよりもっと知りたいと感じ、
この機会に自転車を持ち込んでサイクリングした。

音更はなかなか分かりにくい町並み構造があった。
歩くと実に遠く、周辺を知るには遠足気分が必要。
車なら細かく入り組んで見渡せない事も多い。
そこで自転車速度で回ろうと思いたつ。

問題は設計進捗に応じて増える一方なのだけれど、
解く鍵は現場から得たい。晴れた春の日、走る。

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河川敷の花壇、何方が見ているのかな?
パンジーは植えられてまもなくだろう。水も与えられている。
元気に花開き、分かっていてもつい、見入ってしまう可愛らしさ。

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足元の河川・・・小さな流れの小川なのだけれど、

こんな具合に足場が出来ていて、思わず渡る。
「音更」の語源由来、川の多い場所?面白い。

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用水のような場所も多い。国道は開かれているものの、
そこかしこに水がある。探せばザリガニが居そう。

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正しく擁壁に囲まれた川筋もある。土手はフキに覆われる。

f:id:N-Tanabe:20190214040838j:plain緩い流れながら水量のある川もある。どれもがやがて一つに
注ぎ大きな流れになり太平洋へと続くらしい。

f:id:N-Tanabe:20190214040844j:plain水場は生き物の気配があって好きだ。つい、川ばかりを追った。
のではあるけれど、国道と併走する一本内側に入ると細い道。
開拓期の道幅なのだろうか?車なら往生する程に細く入り組む。
かなり古くから人が在り、農地を一息に開発して町並みを得た
わけではなく、今に至るのだろうと予想する。面白い。
国道しか知らなかった時とは違う風景があちこちにあって、
眺めると興味深く、でも歩くと遠く、車なら速過ぎ、自転車が

丁度良い具合の町並み構成があった。


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開けた河川利用の公園があった。ここならと眺めると、
遠くに中学生か高校生の子供たちが遊んでいた。
これだけ居住環境に様々な水場の川筋があれば、
遊ぶ場所に困る事はないだろうなーと実に羨ましい。

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ここも綺麗で、生物の気配ある流れ。陽が暮れ始める。

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敷地から近い場所。ここも良いな。適度に手は入り、
先のパンジーのように花壇を何方かが育てられている。
同時に手が及ばず、ここにはカモが居た。そういう
自然もそこかしこに在る。なんてバランスが良い事だろう。


結局、自転車を持ち込んだのはこの一回になったのだけれど、
環境を理解する、という意味では本当に有意義な一日だった。
敷地だけを見て、そこを本堂も無くし白紙で眺めていたなら、
現設計に至る事は在り得なかっただろうと思う。

水が幾筋も様々に高みから流れてきて、ここで出会っては
つながり一緒になって大きな川へと流れる自然な様が在る。
この先には音更川があり、直ぐに十勝川の本流へと続く。

この水の流れに沿って生き物が気配を見せるように、
カモが住んでいるって事は餌があるという事だろうし、
集うように人も集う自然な様を見つけられるかが、
設計に求められているように思われた。

俯瞰的で客観的、全体を見通しまとめる作業は必須だけれど、
設計は敷地、場所の魅力を見つけて惚れる事が欠かせない。
それが私の設計かな。