換気

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これは理想的な住宅事例の断面図。太陽の位置や採光、通風を計画し建築している。

「換気」は考える。
・機械換気(24時間換気)設備
・自然換気(通風)

24時間換気はシックハウスが問題となって以降は必須となっている。閉じた部屋の多い場合は各部屋毎に給気と排気の経路を考え設置される。私の設計はオープンである事を良しとしている事もあり、建物全体で効率の良い経路を考え設置をしている。ムラが出来たり淀みがあるのは宜しくはない。
水分を発する場所は臭気のある場所を排気場所としつつ、清涼な空気の欲しい場所に給気を設ける。但し、寒気は冷気を導く事になるので場所は慎重に選ぶ。

通風も経路を考え設ける。断面的に、平面的に効果的な経路を探す。これは窓を開けて行うもので、夏季に有効に室内の熱気を排出出来れば冷房負荷を下げる事が出来る。

昔の家は石油ストーブが暖房に用いられていただろうか。家の気密性能、断熱性能が極めて劣るために熱を保持できず、圧倒的なカロリーを発生する器具が用いられていた。暖めた空気を送る仕組みが基本。窓を開けてその風を逃がせば寒くなってしまう。

今は温水を巡らせて床暖房としたりパネルヒーターを用い輻射暖房を基本としている。熱を温風ではなく波として伝える仕組み。遠赤とか赤外線と言われる類になる。パネルヒーターは対流も使う暖房器具ではあるけれど輻射も期待できる。

室内環境は気密・断熱と暖房種別に換気までをセットに考える。組み合わせやバランスを間違えるのは大変に危険だ。なので、暖房器具や種別だけを追求するのは無意味になる。高断熱にコストを割いて暖房をFFストーブにしたのでは悩ましい。

そのセットを用いて行うのは、室内から寒い場所を取り除く事に尽きる。寒い場所が無ければ、寒くない。暖かくする事を考えるのではなく、寒いところを除く事が肝心になるようだ。

輻射熱で伝わる熱は遠赤、壁や床、天井を温める。大して空気は間接的に温まるので室温は低めになる。FFストーブは空気を暖めるケースが多く室温は高めになる。但し床壁天井は間接的に暖まる。

鍾乳洞に入るとひんやりした経験はあるだろうか。冷えた洞窟壁面に身体の熱が奪われる事で感じるもの。同じことが冬季の室内では起こる。気密・断熱性能の十分ではない家ではこれが常態となり、どれほどFFストーブを焚いても寒さを解消できなかった。輻射暖房で室内面を十分に暖めると、室温に拠らず暖かく感じるのは、鍾乳洞とは逆の作用が起こるから。

このような場合は、冬でも寒気が出来る。窓を開けても熱は建物が保持しているのでロスが少ない。もちろん、FFストーブ暖房のようなケースでも熱の全てが逃げるわけではないので、陽気や状況を見て機械換気に頼らずに自然換気する方が健やかだと思う。



商業ビル、オフィスビルは基本的に換気計画が正しく行われているので、間違った使い方がされていない限り換気が不足する事はない。住宅の場合は容積を基本とした計画となるので、滞在する人数が多くなる場合は自然換気での対応も加えるのは望ましい。お正月に数家族が一同にするような場合は、時々換気するのが健やかだろうか。

「換気」について書いてみようと思ったのだけれど、暖房と気密・断熱がセットになるので話は長くなる。建築はバランス、どこか一点を取り上げ探求しても無意味な事は多々だ。