Compact house 考 その⑫ 更に分析を試みる。

寝床をアルコーブではなく「寝室」に別けたプランを図式化してみる。何が違うのか?を考えてみる。

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【Type-101】として案内したプランは寝室を設けている。プライベート性の強い空間を公な性格の空間であるLDKと切り離している。落ち着きがあるプランになる。図式化すると・・・

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このような具合だろうか。先に案内した【Type-012】プランに比べると居室と動線の関係は一気に複雑になっている事がわかると思う。この複雑さにより公私区分を明瞭にする事が出来る。その分、建築規模は大きくなる。

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【Type-131】このプラン公私区分は明瞭だ。ENT(玄関)から遠い程にプライベート性が高まる、「距離」を実際に離す事で区分するプラン。

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DOMA」を通じてオープンで連続する空間にも関わらず、LDKからはBedRoomを伺う事は出来ないプラン。

例えば、「オープンキッチン」は好きでプランする事は多い。

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これは【DOMA/NATORI】の風景。飾られていてもキッチンは一般に生活感を免れない。冷蔵庫や電子レンジなどの家電が並び・・・となれば生活感が現れ、飾ったLDKスペース全体が生活感を強くしていまう。すると、来客として訪ねた際に、見てはいけない、見なかった事にしようかな?と思う場面に出くわす。これは写真家に撮って頂いた写真、綺麗に整えられているけれど、日常のままの風景。家電が海外のデザイン家電でも同じこと、この住宅はそれらと収納を奥に納めつつ、作業動線を考え実現している。今訪ねても、この具合に違いなく、子供の散らかした様を眺めるかどうかになる。子供の楽しい様は寧ろ見せて頂けるなら嬉しい。

見せて良いもの、見せたくはないものの区別が公私の区分。パブリックとプライベートを明瞭に出来るプランなら住まう上で節度を失う事がない。コストや面積制限があり、混同するプランとしても、写真なら取り合えず綺麗には出来る。その綺麗なまま生活出来てしまう方ならそれで良いものの、一般的にはそれはハードルが高い。写真では綺麗だったのに、実際に訪ねると・・・あれ?と言う事例を探すのが難しくないのは現実。

【DOMA/NATORI】は家具調度に合わせて柱梁等を整える。クーラーは止むを得ずなのだけれど、それ以外の何かが表に出て来なくて済むようにと取り組む。もちろん、そこに至るには相当な労力が私のみならず、クライアントにも要求される。何を何処に置き、これはここ、これは向こうと収納量と余裕やゆとりある計画を得る為に果たす事はとても多かった。それが出来れば今は、この様になれる。一緒に考え悩み得たこの光景、私はとても好きです。

清潔感を保持する事は無理だろうなーと言うプランでも綺麗な写真を撮る事だけは可能だ。

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別の考えとして、【MoAi in ny】の取り組みもある。そもそも子育てに忙しくオープンにしたのでは堪らない!と言う事もある。この住宅の場合は実は、優先順位はブルックリンブリッジのポスターを壁一面に貼る!という事を優先した結果が事実なのだけれど。実施設計の頃だったろうか、写真が届く。「これを貼ります!」と。たまげた。

この橋の向こうにキッチンはあり、来客があっても覗かれる事がない奥になる。どれだけ散らかっていても支障がない。設計で重要としたのは仕切り切らない事。高い天井の空間、壁は低く抑えられていて目隠しのみとしている。気配も声もある一体的なLDK空間だ。室内採光上もキッチン側に設けた窓は重要で、特に見えている天井際の窓の明かりは奥行き感を室内に与え伸びやかにしてくれる。この壁が天井まで立ち上がり部屋として塞いでしまと、折角建築した室内容積を小さく閉じてしまうので、清潔感どころか閉塞感を生み出してしまう。室内に閉じ込められたのでは、それが大きな部屋であったも息苦しくなってしまう。

空間は抜け良く伸びやかであるのが良い。外を歩き回る感覚を取り込んで置きたい。いくら大きな空間でも閉じ込めらた閉塞感を伴うえば広さよりも息苦しさが勝ってしまう。写真の通り、実際にここを訪ねると窓が四方に抜けて外に繋がり、閉塞感を感じる事が難しい。実際は小さな面積の空間に違いないのだけれど、「狭い」と言わせない説得力がある。大勢で行けばそれは実面積が欲しくはなるけれど。

穴蔵の様な囲われ守られる空間の魅力はあるものの、人が集う場所なら空間の広がりを失うと窒息してしまう。

話が事例に膨らんだのでズレたかもしれない。小さな住宅空間を考えるとしても、明らかに小さな空間は厳しいと考えた。大きな空間でも生活感の滲み出てしまう様では別の息苦しさを感じてしまう。清潔感を失わない事は優先順位の上位として取り組んでいました!