【DOMA/yamanote】の「ドマ」を振り返る・・・⑫

北海道の住宅、設計命題になる。厳しい環境に耐えるには気密・断熱の高性能化は欠かせない。技術的には極めて完成に近づいていると思う。高性能は数値化して判断の出来るもので、時にそれは利便が優先される。ただし、心地良い住空間は数値化が出来ない。心情を計る数値は無いので然り。性能は目的にはならない。利便は要求に依るので変化する上に必要事項に過ぎない。本当に欲しいのは何か?

DOMA/yamanote】のオーナーから届いた、成長する子が設計者の想像を超えて家の中で遊ぶ光景は、あまりに印象的だった。ループ動線のある住まいで鬼ごっこを、と少し前に書いている。そんな楽しみを余剰にコストを掛けずに、肯定的にプランに取り組めないか?

「ドマ」のある家は随分昔から温めていたアイディアで、隙あらば取り組む。最初に実現出来た【Bookshelf】【DOMA/道南】など、これまで幾つかを設計している。空間の要に据えてプランをする意味では同じ構成なのだけれど、敷地=場所が違えば自ずと異なり、当然ながらどう楽しまれるかはオーナーによる。思い思いに楽しまれていて、それを肯定できる空間になっている実感がある。

「こう住みなさい。」と、高圧的に映えるよう強要はしていない。本当に思い思いに生活を楽しまれている風景が表出する。それが居住空間ではないので散らかり生活感が露わになると言う事もなく、その住まいの顔になっているように思う。

「ドマ」は内と外を円滑に結ぶために必要なスペースであり、温熱環境の負荷を最大限に担う機能空間でもある。4LDK・・・のような一般的なプランから解放され、外との関係を深め、多様な空間質を一体化させている。でも、素直に言えば、楽しいから欲しい。


計画をする際は、もちろん「ドマ」を用いて攻める設計を試みるのだけれど、それがコスト増、面積増とはならぬようにクライアントの要望を標準的に解く作業も欠かせない。ゾーニングエスキースでは、あらゆる可能性を模索した上で、それを超えるプランに登場させられないかと取り組む。手間暇を掛けた設計技術が裏付けになっているのです。

 

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雑草生い茂る【DOMA/yamanote】の敷地、どうしてココに「ドマ」をと考え至れたのだろう?今となってはとても不思議。感じてしまった。敷地が、そう仕向け語りかけてくるのを待つことが出来たのだと思う。「そんな事をしたいの?ココはどう?」という具合の会話を出来たからだと思う。

恐ろしい事に【DOMA/yamanote】の計画は驚く程に短期間で出来ていた。敷地の素直さが重要だったのだと思う。敷地には何度も訪ね、雪の中を、雑草の中を漕ぎ回って観察をし眺め過ごしはしたものの、机上では迷わずに描いていた。

その描いた提案を楽しんで頂けたクライアントがあればこそ、具現の際に不足の無い様に徹底して実施設計は行われ、見積調整に挑み、監理を果たした。要望の具現は、竣工写真では実は見えてはこない。12回に渡り書いてみたものの、やはり、届いたプライベートな写真のインパクトは強烈だった。

どうして家の中で雪遊びが始まってしまうだろうか。
どうして友達と一緒にドマに寝転び寛ぎ塗絵が始まってしまうのか。
どうして猫がああまで寛ぎ過ごしてしまうのか。

いや、外に近いというか「室内の外」なので猫は野生を発揮できる場所だったはずなんだけれど、追加で届いた写真の猫の油断過ぎる様も衝撃的だった。まぁ、今時期は床暖で暖かいから理解はできるけれどね。 

北海道の、楽しい住まいをこれからも設計したいと改めて思う。

 

 

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