カテドラル その③ 【 キングス・カレッジ・チャペル 】


『キングス・カレッジ・チャペル (King's College Chapel)』

この教会の存在を知った事が、欧州の旅で教会も巡ろうと思う切欠だった。計画系の、通常は環境、特に「音」について講義下さった先生は民間で設計をされていた経験があり、彼の部屋にはそれまでに見て来た建築のスライドが壁一面に収められていた。彼の解説無しには何事か分からぬ極めてマニアックなディテール写真まで膨大だった。

今も記憶に残る講義はこの先生のもの。あれは、私のためにして下さったのだと思う。私は特に興奮したのだけれど、それを覚えている友人が居ない。

音響の授業だったと思う。半期続いた最後の一コマは先生のスライド会となった。これは、「光」についてのものだった。それがあまりに見事で興奮をしたのだった。

天頂に一つ穴を開けただけのパンテオンから始まり、グレアを起こす小さな窓しかないロマネスクの教会、華麗なゴシックの建築へ続き、鉄骨やRCの建築、最後はガラス張りの建築へと至る。この講義で描かれた物語の影響は今も続く。

その講義の中でキングスカレッジの教会は、ゴシック建築の極致として紹介された。それはあまりに美しく、果たして本当にそうなのか?確かめなければならないと思わされた。知らずには設計の道を歩めないと思う程に。

島国イギリスの組積文化は欧州大陸とは系譜がやや異なる面もあるのか、毛色の違いは感じている。それが何かを学んだ事はなく今は語れないのだけれど。実際、イギリスに渡るまでに数多くの組積造の建築を眺め、もちろゴシック様式のカテドラルを何時も見て来たこともあり、箱型の外観は不思議に見えた。既にまるで鉄骨造の様相だ。突き詰めると石積み構法もここまで構造を明快に出来たのだ。この価値観はイギリス特有なのかもしれない。イングランドなのかその辺は分らないけれど。

スケッチは外観ラフの他、この内観を知るには、ここからエントランスを振り返るか、エントランスから眺めるのが良いのだけれど、美しいヴォールトを記したいと思ったのだろう私、束ね柱もない大きな窓のある外壁は「柱」と「ガラス」の構成でまるでかーてウォール、その柱からは規則的にヴォールトが掛かるのだけれど、そのシンプルな構成が実に美しく、何より明るさに満ちた空間だった。ロマネスクの教会が嘘のような明るい室内、石積みの建築で到達していた。

夜に描き加えられるだけの情報を記し印象を脳裏に焼き付けていたはずだけれど、手を付ける事ができずの未完のスケッチだ。手前に巨大なパイプオルガンを描いている。

学生の頃に存在を知り、興味を覚え、実際に自分の目で確かめ、空間を体感する。


■記事一覧
カテドラル その① 【 ウェストミンスター大聖堂 】
カテドラル その② 「カテドラル」デビット・マコーレイ作 岩浪出版 
カテドラル その③ 【 キングス・カレッジ・チャペル 】
カテドラル その④ 【 ノートルダム大聖堂 】
カテドラル その⑤ 【 ケルン大聖堂 】
カテドラル その⑥ 【 サグラダ・ファミリア 】