オンネトー その①【管理棟建築】


もう25年以上も前の事、道東は阿寒国立公園にある小さな湖、オンネトーのキャンプ場の管理棟施設の設計に携わった。計画し、実施図面を描いた。ただ、監理には携われずの心残りある建築で、あまり紹介をした事はない。

図面にあれこれと記しているのに、不明点は都合よく施工されてしまい、特に採光と照明は意図とは真逆の設えとされてしまう・・・愚痴っても仕方ないのだけれど。良い図面が描けても自分で(設計)監理しなければ成果を得られないのだと思い知る。

出来ている事もある。この建築を堺として駐車場とキャンプ場を明瞭に区分が出来た。長い建築は城壁のように駐車場を仕切り、キャンプ場を隠している。それはゲートでもあり、一歩踏み入ると静寂の森の中が広がる。

建築行為にジレンマはある。本当は人を寄せ付けぬ事が景観や環境を守る上で最善。けれど、厳し過ぎると遊びにも寄れなくなってしまう。せめて人が集うのなら?思慮を持って設計を試みた。その良し悪しは別として既に25年以上も経っているので、この建築無しのイメージは出来ない。今も無事にその役割を今も果たしているのを確かめに年に一度は通う。



管理棟建築以前の写真が出てきた。小さな公衆トイレと奥に青年の家だったろうか、が嘗ては在った。この頃は紅葉の綺麗な季節でも、もちろん登山客は多かったものの、登山口はまた別の場所でもあり、人で賑わうのを見た覚えはない。当時、ここでキャンプをされる方は強者だったに違いない。

公衆トイレは必要な施設だとして写真の様子は景観上、宜しくない。人の出入りが丸見えな上に存在が「トイレ」だ。現在の管理棟は中央が通り抜けられ、キャンプ場と駐車場の両方へアクセス出来る回遊動線を作っている。通り抜け部分にホールを設け、そこからトイレに入る。キャンプ場からは一度ウッドデッキに登り、その奥になる。つまり、建物への人の出入りは見えるけれど、トイレへの出入りは見ない!

住宅だって、リビングからトイレへの出入りが丸見えではあずましくない。気を配る場所は、森の中でもやはり同様に気を配りたい。


私の思慮や配慮、節度はこういう空間から学んだのかもしれない。今のこの場所が綺麗に保たれているのは、現に運営管理されている方々のたまものに違いない。末永く、楽しく訪ねる事の出来る場所であって欲しい。

 

⇒オンネトー その①【管理棟建築】
⇒オンネトー その②【湖畔の風景】
⇒オンネトー その③【景観破壊】
⇒オンネトー その④【計画の検証】