W杯観戦記?

初めて観戦したのはイタリアのW杯、学生時代だった。製図室に住んでいた私は寝る為に部屋に戻りテレビを付けると、サンシーロスタジアムは発煙筒で白く煙り、地響きのような『歓声』が響き私の部屋を満たしてしまう。サッカーとはこのことか!と始めて知り、文化を実感する。以来の8大会だろうか、その『歓声』を聞きたくて観戦している。

日本が出場するようになって久しい。今大会では頑張って3位かなと思えば初戦でドイツを、3戦目でスペインを撃破し、あろうことかグループを1位通過してしまう。日本のサッカーは果たして国際舞台でどう評価されるのだろう?日本の躍進は世界に存在を知らしめたのか?余計だったのか。まさか、この舞台で好成績を収める時は来るとは。

私のアトリエにはモニターが2枚あり、期間中の夜更けの1枚はサッカー専用の様相であった。横目に観戦しつつ過ごす。仕事をしつつともならず・・・メインのモニターで別の事をしていた。

少し前に取り組んだ『スケール感の検証』がとても興味深く、手元にあるこれまでの設計図面を引っ張り出してはイラスト的な加工を試みていた。ワールドカップは1ケ月程の事、割と公開したい図案がそろったかも。

添付はこれから紹介しようと思っていたニセコで竣工した【PW Residence】の断面図。この一ヶ月でプレゼンテーション・スキルは向上したのではと思う。

 


使っているCADはパース製作が出来る。面白いのは白模型パースが出来る事。余計な機能は使わないものの、これは検討時に有効だ。スチレンボードで模型を作った際に先入観なく空間を眺めるなら、質感や色の無い「嘘をつかない白模型」は極めて有効だ。そのステップで不足があれば、後に良くなる可能性は乏しい。

添付の画像は【光明寺】の水平断面パース、つまり平面図に相当する。平面図だけれど、立体的で空間を感じる事が出来る。表現上、一方から光を当てているので実際の空間の明るさとは違うものの、空間の粗密の具合といい分かり易い。打合せの際に平面図のみの場合、何帖?と大きさに捕らわれるクライアントは少なくない。こういう表現が容易に出来れば、もう少し正しく理解頂けるかもしれない。手描きとは別の表現として。


と、言う具合に観戦しつつ、試してみたいと思っていた事に挑む時間でもあった。有意義にWカップを楽しんだのか?間違いなく4年に一度の『歓声』は聞いた。




以下は唯の観戦日記。(書きかけです。)

■決勝戦
これが映画なら、グダグダの出来損ないの下手なドラマ以下の展開に過ぎず、しかもそれが現実だった。正に小説より奇なり。観たいサッカーの試合ではなかったけれど、こんな試合は2度と観る事は出来ないだろう。

■決勝戦② メッシ
アルゼンチンは10人が完璧なサッカーを披露した。英雄とされるもう1人が時々守備をして驚かされ、たまにした仕事は決定的だったけれど、基本はトボトボとぼ歩いているだけだった。

■フランス代表
誰しもが望むサッカーを披露した。左にエムバペ、右にデンベレと速いウィングを用意し、中央にストライカーのジルーを置く。中盤には円熟のグリーズマンが君臨する。彼が前を向いてボールを持てば、左右広く縦に深い多彩なサッカーが繰り広げられる。守備の硬い準決勝のダークホース、躍進のモロッコ戦では・・・モロッコが出足を間違えた気がする。堅守の中盤は得点するために前がかりとなり隙を多くしてしまった。

■決勝戦③ ディディエ・デシャン(監督)
中盤で横パスが悉くアルゼンチンに奪われ、要のグリーズマンが機能せずの前半、期待の両翼にはボールが回らず失点が続いた。ここで本来なら中盤をどう機能させるか?を悩むはずの監督は、堅い相手の中盤と勝負するのではなく、すっ飛ばそうと思い立った様だ。

華やかなフランスを支えたジルーにデンベレ、要のグリーズマンを諦めて中盤を捨て、個のフィジカルに頼る、まるで違うチームへ前半に変身する。敵も味方もびっくりしてた気がする。アルゼンチンにすれば備えた相手選手が軒並み居なくなり、何よりフランス自身、あれ?だったろう。

劣勢の最後の10分ならまだしも、結果的には75分を耐え凌いだ上に3-1の成果!個の力を認め選んだ選手を信じた監督の采配に再現性はない。間違えばチームは組織を失い大量失点も覚悟すべき変身を判断した監督、おそるべし。

ディディエ・デシャン
彼は現役時代にW杯優勝をキャプテンで経験している。当時のメンバーはスーパーなレジェンドが揃う。ジダン、アンリ、ピレス、ヴィエラリザラズテュラムデサイー、ブラン、バルテズ・・・放っておけばボールを離さずバラバラに散らかしそうな面々をチームに仕立て上げた実績がある。誰しもがデシャン・キャプテンに頭が上がらなかった、印象がある。それが監督で2連覇目前まで迫る。少なくとも決勝はドローだ。

ファン・ハール(オランダの監督)
名選手や名監督はあるけれど、勝つためにはリスクを最小限に抑える事に努める。オランダの名将ファン・ハール監督は、以前はトータルフットボールを体現し、攻撃は最大の防御としてリスクを冒し勝ちに行った人だった。「一点でも多く取った方が勝つ」ルールを知っていた。この大会で再び指揮をとるも、最後までリスクケアを優先し冒険に出る事はなかった。アルゼンチン戦ではドロー、負けはしなかったものの勝てなかった。最も、惜しむらくはあの試合の主役が主審だったのが勿体ない。

■決勝総評
デシャンは監督として、5人交代の出来る初めての大会で最大限の効果を発揮させた監督に違いない。まさか、後半から見た事の無いフランスどころか、中盤を飛ばす!?まるで知らないサッカーを采配してしまうとは。

クロアチア
モドリッチ率いる彼等が世に登場してから久しい。その当時はスターが揃う上に戦術まで長けたチームだった。ルーマニアブルガリアなど嘗て東欧とも呼ばれたバルカン半島は東欧のブラジルと言われる程に優れた選手が多い。ヨーロッパでもアジアでもない巧みさ。

嘗てはユーゴスラビアという国が存在していた。彼等はW杯の舞台でも大活躍する程で、日本人に馴染み深いストイコビッチ選手/監督も居る。ストイコビッチセルビアの監督として元気な姿を見せてくれて嬉しい。

ユーゴスラビアが活躍した時の選手達も強烈だ。まず監督がオシムさんだもの。ストイコビッチサビチェビッチ、ボバン、スーケル、ボクシッチ、ユーゴビッチミハイロビッチプロシネツキ・・・と、とんでもないレジェンドが揃う。まぁ、天才過ぎて守る事をしない華麗な方々ばかりだけれど。

1998年のワールドカップではボバン、スーケルプロシネツキ、ロベルト・ヤルニ、ボクシッチは怪我・・・でダークホースとなった。(日本は対戦して敗退。)この時が最高で超える事はないのだろうと思っていた。

ところが、人口400万人と北海道規模にも関わらず今も優れた選手が数多い。前回大会は準優勝、決勝ではフランスと対戦している。そこから世代交代は進み再び挑み3位の成績を収める。

最後まで見事で楽しいサッカーを披露してくれた。そう、私は「楽しいサッカー」が観たい。彼等が居てくれた事でこの大会も充実した観戦が出来た。ありがとう。