スケール感の検証を。

スケール感の検証を期せずして検証しだし夢中になる。スケール感の比較に「一般的な住宅」を想定する。在来木造建築として柱の高さは2900mmの2階建、天井高は2.4m、1階のリビングのみ高天井とする。「nLDK」プランは、客間兼用の和室、主寝室、二つの洋室の4LDKとする45坪の住宅とした。外構の比較は以前に【Bookshelf】の事例を紹介している。ここでは断面を眺めてみる。


1階はLDKと客間(和室)、2階は左から主寝室、洋室×2のレイアウトとする。


部屋毎に仕切られた箱状の空間が積木のように重なる。私も含め、世の多くの人が住まえる空間が提供されるのだと思う。

これまでに記してきた事例と比べ、空間の創りが違う事は伝わるだろうか?

工業規格のボードに合わせた天井高さの一般的な居室は、大きくはないけれど不足の無い具合。ただ、私にはどうしても四隅のカチっとした閉塞感が気に障る。プライバシーのある個室の安心感よりも、閉じ込められている不安感を覚えてしまう。何より、ドア一枚で守られると信じなければならない。半端に大きな空間に『間』がうまれ空虚感を感じてしまう。



比較のために【 DOMA/Yamanote 】の事例を横に並べる。大きさがまるで違う。ここまで必要空間を削ぎ整えるのは至難だ。間違えば、ただ小さな家になってしまう。適切にスケール感を整えられれば?これを知るには空間体験が欠かせないだろう。

空間が密に連続して閉ざされず、空間には奥行きがあり、大きな空間も小さな空間も重なり変化に富み、スペースは様々に変容して行く。単純に楽しそうだなーという印象でも良いかもしれない。

しかし、それにしても、ここまで違うとは。本当にスケール感がまるで違う。

住宅とは『家族』の住まう空間だ。個室化して明瞭に区分する事が要望に応える全てではない。大切なのは『スペース』を創る事。そのスペースがどの程度のプライバシーを要するかは家族により異なる。探しカタチにするのが『設計』になる。

『スケール感の検証』で案内してきた住宅は、設計から竣工まで概ね最低でも1年を要している。費やした労は代え難い。平面的要望のみで設計するよりも空間を効率的に使い、規模は2割程度は抑えているはず。建設費を抑え、維持光熱費やメンテナンスコストを抑えるのにも役立つ。5年後、10年後、30年後を見据えた設計は、使われないスペースを無くい、住まう人に合わせた変化を許容する。

眺めると、住いの個性は平面よりも断面により特徴が現れるように思う。「一般的」とした事例は誰でも住まえるだろうけれど、誰もが似た、画一的な生活スタイルに陥りそうに感じる。比較した事例は素直に楽しそうに見える。これを元にして実現した住宅は実際、楽しそう。読まれたかは、果たしてどう感られるだろうか?



以下に検証リンクを。
■【MoAi in ny】の検証!
■【 DOMA/NATORI 】
■【DOMA/Hakodate 】
■【 DOMA/Yamanote 】
■【 DOMA/道南(South Hokkaido) 】
■【 Bookshelf 】
■【 Compact house 考 】
■【 一般的な住宅との比較 】
■【 佛願寺 】
■【 光明寺 】