百年記念塔チカホ展 その⑥ 感想


札幌駅と大通り駅を結ぶ地下通路のチカホを祝日に行き交う人にとって、これが何なのかは説明不要だった。図面に模型、始めて見る人がこれを「百年記念塔」だと知っている。

建築家集団による展示、敢て写真を飾らなかった。それは昨夏のギャラリー展も同じく、模型と図面だけで勝負をした。親分連中は当初、写真を飾りたかった様子だけれど却下してやった。果たして挑戦は多くの市民道民の行き交うチカホで認知されるのか?不安はあったもののそれは杞憂で、想像以上に多くの方の目が向けられた展示に出来たと思う。



景観を失い保存される時計台や道庁庁舎は北海道の建築を代表するのだろうか?痕跡としての意義はあっても生きた建築とは呼べそうにない。手厚い保護もあり、今も存在に疑問はないものの、そこから偲ぶ何かは想像し難く、観光目的の運用が主になってしまったように見える。生活に根付いた建築、建築が作る景観が北海道には乏しい。

函館、小樽、室蘭のような古くからの港町には風景が残っているように思う。或いは、私が毎年必ず訪ねる有珠の善光寺は歴史を伝える景観が在る。

訪ね来られた方に札幌や近郊を案合する際は何処へ行くだろう?時計台や道庁へは行かない。札幌や北海道を舞台にしたドラマなら大通公園テレビ塔を背景に選ぶだろうけれど、テレビ塔も敢て行く場所でもなく、寧ろ大倉山のジャンプ台は優れているかもしれない。ジャンプのW杯会場として眺めるとややみすぼらしいけれど、札幌や北海道を象徴する景観の一つかもしれない。

晴れた日なら野幌森林公園は特別な場所だと思う。記念塔と開拓記念館、時間があれば開拓の村までなら間違いのない場所だった。

数年前に訪ねたタイは面白かった。街中は整然と都会だったけれど、路地は賑やかで散策が楽しい。どの街にも貴重な寺院があり趣もあったように思う。北海道は寒い事もあり閉じた店舗が多く、街中散策は楽しいものではないかもしれない。新しい施設を訪ねる程度で、けれどそれらは札幌以外に充実した場所は多い。自然以外に魅力的な景観は求めようもないのだろうか。ニセコを訪ねる裕福な外国人は札幌へは来ない。そういえばベルギー人の知人は平取に興味を抱かれていた。風景がある、と。


気持ちある建築を景観として活かしてこそ。貴重な建築、場所を今、我々は失おうとしている。