パン⑥・・・パン屋を設計する。

随分以前の事、パン屋を設計した事がある。タイミングが合わずにだったと思う、何故か竣工写真が撮れず、記録写真のみが数少なく残るのみ。この時の反省から後に撮るようになったのだと思う。

当初からの重要事は『窯』、水蒸気噴霧式のガス熱源の耐熱煉瓦で作るオリジナル窯だった。クライアントが修行されたパン屋が函館にあり、建設地は北見。一泊二日で見学に行った。パン屋の朝は早く、朝の4時だったろうか、訪ね昼過ぎまで一気に全てを見学させて頂いた。

パン屋は拘り次第で所要設備が様々になるらしい。但し基本はあるので作業動線は大いに参考にさせて頂いた。朝一番に何を焼き、昼までに何を焼き上げるのか?手戻りや重複がなく流れる様に作業が出来るように最大限に工夫した工場プランを創る。

図面は計画段階なのもの。工場内はほぼ完成に近い。

参考にさせて頂いたお店は今も函館にある。水噴霧型の石窯の参考は札幌、西区にあった。そこで焼かれたパンも美味しく、しかもそこの珈琲は格別に美味しかった。煎る前に洗い、干した上で少量を煎る。特別に美味しかったのだけれど今はもうそこに無い。

数々のクライアントの理想をお聞きし、再現出来るだけの準備をし、絵に落とし込み図面として建築された、パン屋。ただ、残念な事に体調を崩され店舗の運営は短命に終わってしまった。

建築は今は別のお店になっている。高校の同級生が一時、働いていた様で驚いたけれど。

石窯は特別な出来で、試作の質素なパンは少し焦げていたけれど、本当に美味しかった。欧州旅で覚えたパンがあった。これでパン文化を楽しめると思っていたのに、今はもう懐かしい。



■パン記事は以下の6つです!
パン①・・・大福より「パン」だった。
パン②・・・歯が立たないドイツパン。
パン③・・・北欧でサンドイッチ
パン④・・・パリで街角フランスパン(バケット)
パン⑤・・・番外編はオンネトー
パン⑥・・・パン屋を設計する。