ホッケ柱

少し前の事、「北の海 よみがえる絶景」という番組を観た。これは特別に興味深い映像だった。

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先ずは写真を案内したい。「ホッケ」の雄姿だ。
・・・開いた姿ばかりが思い浮かぶ魚だけれど、案外に俊敏で元気の良い魚だ。これは室蘭の水族館で撮影したもの。学生時代から、あの水族館はとても好きだ。スーパーに並ぶありふれた食卓の魚が泳いでいる。

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珍しい魚も良いのだけれど、この水槽など傑作だと思う。カレイとホタテが居る。砂地に潜るとどちらもまるで気配がない。ちなみに写真中央下にもカレイが居る。素晴らしい。そこらの砂地の海の底はこういう具合なのかと想像が出来る。地味?違う。これこそが迫真の世界だ。極めて勇気ある水族館だと思う。


話を戻すと、ホッケ。

木村龍治さんの論文
https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2011/2011_10_0043.pdf

平成23年日本水産学会論文賞受賞
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/78/4/78_h23-63/_pdf


ホッケは浮袋のない魚なのだそうだ。海面に漂う新鮮なプランクトンを捕食するために集団で挑む。群れを成して垂直に泳ぎ湖底から海面まで伸びれば、海表に漂う春の恵みたるプランクトンを海底にまで引き込める渦を作れるらしい。ホッケはこの柱に参加するだけで食に在り付ける。この垂直に展開する集団が「ホッケ柱」となる。

テレビでは直系3mで高さ15mのホッケ柱が映し出されていた。数万匹が参加する巨大な柱状の物体は壮観だ。知らずに海中で出会えばクジラか化物か?という具合なのだと思う。

開かれ焼かれるだけの魚かと思えば、北海道のどこかの海で、このような柱を作り出している。頭を使い、会話し、協力をして成すのではなく、反射的に造られる自然の凄み、人の想像を容易に超えるスペクタクルが実は、あまりに身近な食卓の主が成しているとは。ホッケを知らない道民は居ないだろうし、ホッケが美味しい事を知らない人も居まい。それが実はトンデモナイ。

遠くの海の食べた事もない見慣れぬ魚の所業ではなく、当たり前の日常に驚きのある事実は唯の日常をより壮大にしてくれる。知らずに唯の存在と思っていた自分を嘆きたくなってしまう。知れば?とても楽しい。それはとてもイイ。