カテドラル その② 「カテドラル」デビット・マコーレイ作 岩浪出版


絵本を紹介する。「カテドラル」デビット・マコーレイ作 岩浪出版

建築書籍として、かなり当初から私の本棚に鎮座する一冊だ。絵本?いや、専門書に違いない。誰にでもわかる絵解き解説は学生だった私に強く響いた。

もっとも驚いたのが工期だった。常識的な今の建築は設計を含めても長くて数年、計画からでも数十年だろうか。ところが石積みの建築は数百年とされる。桁が違う。設計者に施工者、施主もが何代にもわたり繋がる事業だ。驚く。

世代を超えたその「時間」の長さに応じて相応しい価値が築かれるのではと思われた。

長ければ良いわけでもない。時に歪められ、或いは資金が不足し、求めた成果とはまるで違う事もあるだろうし、実現に至らぬ建築も多々あったにちがいない。無事に完成した建築が今残る。それらは多くの人の気持ちを紡いだものだ。

そもそも使われる石は多く場合、その地域で産出されるものになる。当然のように景観の一部となり風景をつくる。その上に塔を持つ教会はランドマークにもなる。

石を積み上げる行為は時間を重ねる行為、石の圧倒的な重さがその事をより実感させる。積み上げられた巨大な建物は既に山の如くで、微動だにしない確かな存在でもある。

実際、石は重い。サンプルを袋一つ程度集めただけで腰にくる。

古い本だけれど今も変わらず良い本です。


■記事一覧
カテドラル その① 【 ウェストミンスター大聖堂 】
カテドラル その② 「カテドラル」デビット・マコーレイ作 岩浪出版 
カテドラル その③ 【 キングス・カレッジ・チャペル 】
カテドラル その④ 【 ノートルダム大聖堂 】
カテドラル その⑤ 【 ケルン大聖堂 】
カテドラル その⑥ 【 サグラダ・ファミリア 】