お彼岸、永代法要と基本となるだろうお寺の日常を
観察させて頂き、本堂の扱いにも方針を見出し、
敷地周辺への調査も進め、町の歴史にも目を向け、
考える上で必要な情報がそろいつつあった。
計画当初とは比較にならない情報量を得ていた。
エスキースは継続をしていて、いつもあれこれ考えていた。
お寺の顔となる国道側正面は、敷地の接道距離は短い。
大きな伝統的な本堂を持たないお寺となる計画では、
何をどう見せるか悩ましい。仮に大きく存在ある建築を
試みても、敷地の国道側は狭く限られている上に、
近隣には巨大な商業施設が多く、適わない。小さく見えて
しまうだろうなー
逆に、小さく見せようと思い立つ。住宅一軒よりも小さく。
出来れば、周囲には見当たらないスケール感覚の存在を。
住まう使うには狭く、平屋でも2階建てでもない大きさで。
敷地を見通せる交差点、実は約10度の角度がある。
音更の川筋に沿う国道は曲がり、区画線とは傾きがあり、
交差点へは鋭角となる敷地は、鋭くパースを効く。
傾きが逆なら広がりあるように見えるだろう。
建物に傾きを持たせるだけで、何事も無く不思議な、
或いは印象的な光景を見せる事が出来るかもしれない。
実際、交差点は直行しているように人は見えてしまう。
頭が、脳がそう補正してしまう。けれど揃っていない
状態や歪んだものを感じる力も皆が等しく持って居て、
上手く使えるなら印象的なものに出来る可能性がある。
もっとも、これを使うデザインは一筋縄では行かない。
むしろ、とっても困難で難解にはなるのだけれど。
予算と規模を検証しつつ、諸室の最小限度を意識しつつ、
より具体的に各室の関係を整え、建築全体を眺めつつ。
敷地北側(図面上)の敷地の凸部を除いて一本の線を引く。
これは背骨となり、後の計画へ生きてくる線に成った。
諸室の関係とは動線の計画に繋がる。敷地のどこにどう
在るのは自然か、それがどう結びつくのが無理がないか、
などと言う事も意識しつつ。
ただ、行き詰って少し無謀に取り組みも試みる。
敷地を見ている上に、やはり3つ角を失ったオセロ状態の
敷地には苦労をする。うねる線は多く相当に煮詰まる。
ただ、重ねるエスキースの先に、何かに修練しそうな勢いも
出始めた感じがする。
屋根形状も考え始める。大きな薄く軽い屋根をイメージ。
約一月の変遷、その最後はスケールを上げ、手描きで
一枚の図面にしていた。