光明寺設計物語【2017.06.24】総代会出席

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設計は計画の進捗を報告する機会となった。
冬に始まった設計は初夏を迎えていた。
思索は深まり、理解は進み、提案は具体的に。

「計画」「実施設計」「監理」これが設計業務。
計画が実施に移るには、具現の可能性を明らかに
する必要がある。本堂は新築、建築は木造として
取り組むとした。設計チームを作り、業者とも
協議を重ね計画を練っているものの、予算内で
建設可能かどうかの確信には至らない。

この規模の木造建築となれば、事例は乏しく
推量は及ばない。ここで一社、後に見積もりに
設計者推薦で参加頂くとして、概算見積もりを
依頼する事を提案した。

概算とは言え業者の選定は慎重に行う。
仮に私が悪い事を考え、業者と癒着するなら、
それは出来なくもない。目的が金儲けなら、
それは有り得るかもしれない。けれど、
目的が良い建築をとするなら意味がない。
後に示す図面を見れば明らか、どの業者も
覚悟するレベルだからだ。

本見積では正直・・・余り多くを語らずに
済ませたい。図面に従い沢山の事をあれこれと
施工者にとって安全側に拾われてしまえば、
高い見積が出てしまうので。
ここでしかし、概算なので適切なコストを
知る必要があり、実施設計前ではあるものの、
遠慮なく仕様、仕上表にも記す事になる。

設計者と施工者には信頼関係が欠かせない。
どちらも施主の要望に応え価値を創出する事を
目的とする。建築が始まれば設計者と施工者は
格闘する事になる。その際に不足の無い相手を
選ぶ必要がある。直ぐに根を上げ「出来ません」
と言う施工者とは仕事をしたくはないし。
寧ろ、逆に提案されるくらいであって欲しい。

話は丁寧、長くなったけれど、この機会も又、
私には緊張の時間となった。
具体的に計画が進捗しているかの報告は、
先に示したヴォリューム模型の後に、より具体的に
進んでいる事を示し、次のステップへという
説明を果たさなければならなかった。

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エスキースで示したスケッチはCAD図面になっている。
半年を費やして辿りついた一案だ。
本堂、納骨堂、庫裡を主とするお寺の建築構成、
必要各諸室も網羅している。

役所との協議から確認申請上の取り扱いを網羅した。
構造上必要な特殊な柱、梁は仮定断面を得ている。
設備機器に必要なスペース、諸条件も盛り込んでいる。

木造4号(確認申請で扱う分類では住宅等と同等の
最も法規制約の少ない規模)の「お寺」「渡廊下」
「庫裡」「車庫」の4棟での構成を決めた。
要望規模を検討の末、コストの比較から構造は木造
以外は難しく、準防火地域にある建築であることから、
最もコストパフォーマンスの高い構造を選ぶ。
・・・その分、設計は苦労をする事になるけれど。

余談ではあるけれど、後に友人の設計者から、
4号4棟!?と、驚かれたくらいであった。

この計画を提示したものの、進められるかどうかは、
概算見積次第となる。予算ショートなら計画の見直し、
やり直しとなり数か月分の仕事が失われる事になる。
余裕が出来るなら選択肢は増えるけれども、余裕の
ある設計はした事がない。常にギリギリを狙う。


ちなみに計画はこの後、例えるなら、熱力学の非平衡系、
はたまた動的平衡系か、熱を加えて温め膨らませ、
冷まして縮めを繰り返し、その度に各所のバランスが
移り変わり、その度に懸念は浮かび、解決を求めさ迷う。
お寺においても、庫裡においても問題は様々となり、
本当に思案する事になった。