【計画①】 傾斜地で等高線を創作する。

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敷地に傾斜のある場合、悩ましい。
人の脳は水平垂直で周囲を観測する傾向が強い。
思い込みにも近いのだけれど、微妙な角度や傾斜に
囚われずに立体的に周囲を把握するには適切だ。
ただ、その補正が強くなり過ぎる傾向もある。
それ故に「空間の妙」が発生する。
相対的に理解しようとする理性に対し、実際にある
環境の差異が生み出すリアルな感覚。

設計者であっても惑わされる。そもそも水平も垂直も
この世には稀なので。

しばしば街中で写真を撮ると、実はとても困る。
真っ直ぐ立ち上がるはずの電柱もバラバラだし、
それを信じると他に違和感があったりもする。

体感したものは感じたものなので非常に重要に要素、
これに対して実際を確認することは設計の糸口になる。
先のお寺の設計ではこれを大いに活用した空間を得る。

さて、新たな計画に際し、前置きは長くなったものの、
今は敷地の情報を正している。
得た情報から敷地の高低差を想定しているのだけれど、
これが、えらく大変な作業だ!!

実地ではそこまで傾斜はなかったように思えたのに、
どうもかなりの高低差があるらしい。
一先ずはこれを「正」として敷地と周囲の状況を得るべく、
不足する情報を補うために「等高線」を想定する作業を
すすめている。

ニセコのプロジェクトでも、この作業に大きな労力を
費やした。つい、都合の良い状況を想定しがちだけれど、
正しく現状を把握し、実況の実感に照らし、その差異を
リアルに設計に使えなければ、思い込みに過ぎないものに
なってしまいかねない。

色々と言い訳を考えつつ、面倒だから省こうかなーと言う、
誘惑を何とか回避して、今。

建築行為を行う場所はあるていど高低のレベル差は許容が
出来るものの、やはり求めておかなければ。

既知の情報として得たものから、不足部分を補う作業は今、
等高線。添付の絵の通り、想定し創作をする作業を行う。

・・・止めてくれ!と思う程の高低差がある。
やや周囲の隣地まで含めると15m以上の高低差がある。
・・・これ、模型を作り出したらと思うと実に悩ましい。
1/100スケールなら、2mmにスチレンボードで200mmの差、
30枚以上になりそう。それがA1サイズ弱。

敷地のコンタ模型って、本当にとっても大変。
ニセコのプロジェクトの模型、今年はじめに作ったけれど、
労力の過半が敷地模型に注がれている。


ただ、その労力を費やして想定可能にしておかなければ、
『敷地』と呼応する建築を設計する事は出来ない。

頑張ろう。

そう覚悟するために一文を記事にする。誰かに言っておかなければ、
中途で諦めてしまいそうだし。





高低差のある敷地は実際、コストは掛かる。
傾斜に対応して水平の室内環境を築くには多くの装備が必要になる。
実現への難しさがあると言う事は、より多くの楽しさを得られる
可能性を秘める。その想像は実に楽しい。
先ずはその前段、背景となる環境を地道に求め作業をすすめよう。