【 エスコンフィールドへ 】 その⑤ スタジアム室内を散策する。


試合開始前早々に到着した『エスコンフィールド』、先ずはぐるりと一周する。やはりなのだけれど、3層に渡る野球場規模を一周するだけで汗を流す。

そこで出会ったレフト外野側に聳える『 TOWER 11 』の壁面は格別だった。

満塁で打席を迎えた清宮選手が声援に応えるなら世界は広がるのだろう。実際に世界を広げてしまった日本球界の現役にして既にレジェンドの二人が描かれている。鎌倉の時代に平泉を訪ねた具合に、現代における当時のアミューズ施設の金色堂的な壁画かな。言い過ぎ?


では、何を観る事が出来たのか、少し建築的な視点を交えて写真を貼る。


可動屋根のための巨大なレール架台が室内にも聳える。この空間の骨格は武骨な柱が聳えて造られている。その外側には客席と近い位置にショップが並ぶ。


中でも賑やかなのが飲食店街だろうか。この奥に数々が広がる。不要に彷徨い込めば、観戦に来たのだったか?忘れてしまいそうなお祭り会場で魅惑的であった。実際は、数万人相手の商売なので出来合いのものをチンする程度のアルバイト調理な上に高価には違いないのだけれど、その賑わいは人々を迷わせるには十分らしく、試合開始前から人だかりであったし、試合中も待ち人の行列出会った。


3階から眺める2階はメインフロアで、とても広いスペースが用意される。

この巨大な空間をどう空調するのか?ダクトが中空に引き回される。露出配管は実は非常に手間を要する。天井を貼れば隠されるので多少の無理も承知でクネクネとしても見えない。現わされると、整然として気に障らぬよう徹底する必要がある。工事が始まった時から機械設備設計とは長い間、協議をして眠れぬ夜を過ごしただろうと思う。


巨大屋根のレール架台で左右を仕切られるスタジアム空間ではあるけれど、巨大な客席を保持する大きなコンクリートの柱も立ち並ぶ。一方向に進める通路空間とはせず、外側にある階段等の縦動線、スタジアムに至る動線をも許容する広さがある。


主たる水平上下への通路空間はガラスのカーテンウォールで外も望める広い空間が用意されている。写真左にはスタジアムが直ぐに望めるので、自分が球場のどこに居るのかが良く分かる。外野や内野、一塁側か三塁側は誰しもがわかるだろうし、道に迷う事がない。


数万人の動線をどう裁くか?設計では大きな問いだったはずだ。

嘗て驚いたのはパリにあるルーブル美術館のガラスのピラミッドだった。年間500万人が訪れ、多い日は4万人以上が訪ねる施設の通路幅とは?札幌なら地下歩行空間が参考となる。札幌駅、大通は地下鉄かJRは10万人の人が往来する。札幌ドームは広い場所もあるのだけれど、そこに至るまでが狭まり身動きが出来なくなってしまう。


客席は外野側で区切られていた。フラットで構成される3層構造、客整数を増すために不都合があり、必然としては構造上の区分として分割されているのかもしれない。


そうして辿り着くエントランスホール。

完璧な計画とは思わないけれど、それは大屋根下で造られる故の難しさはあるとして、人が流れる場所、屯する場所、上下に移動する場所、様々を可能な限り調整した上で導く室内の起点となる空間、その計画は間違いないように思う。試合後の帰路で混雑で身動きできない状況はなかった。避難安全の検証も十分なのではと思う。

 


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