【エスコンフィールドへ】その⑦　札幌ドームとの違い。

実際に観戦してみて感じた札幌ドームとエスコンフィールドの違いは席へのアプローチ、プランの仕組み違いだった。

エスコンフィールドは３層から客席にアクセスし、自由に移動が出来る。

対して札幌ドームは１層からのみアクセスし、客席からの移動は苦手だ。

『野球観戦』に特化したエスコンフィールドが特徴的なのだと思う。観戦したゲームは3時間を越えていた。サッカーやラグビーなら時間は決まっていて中間に休憩時間もあり試合に集中し易い。対して野球は長丁場で、但し攻守の切り替えが毎回あるので人が移動する余地もある不思議な競技だ。

日本で「野球」が普及したのはテレビ中継も大きな要因だったのだろうけれど、その観戦を楽しみにしていた世のお父さん達に丁度良かったに違いない。夕食時に楽しめるし、飲みながら観戦が出来るし、トイレに立つ余裕まである。

もしも「サッカー」が主になっていたなら？食事は出来ないしトイレにも立てない。僅かに目を離した瞬間にゴールが決まっていたりする。あまりにも油断ならず、穏やかな夕食の食卓には不向きだ。

例えば家族連れで行くと、野球に夢中な子供なら良いけれど、『レジャー』としてならキツネダンスを加えても３時間は堪え切れずに飽きてしまうだろう。札幌ドームでは何か買いに行くのは手間なのに対しエスコンフィールドはむしろそれが魅力で、客席を離れても何処からでもフィールドを伺えるし、実はアチコチにテレビはあり、歓声は直接聞こえるので雰囲気を常に感じる事が出来る。そういう雰囲気のまま飲食街を探索が出来る。それが負け試合なら？居場所を完全に飲食コーナーに移してしまう選択肢すらあり、そういう観戦日があっても良いとすら思える。デイゲームなら終わった後に居残りラーメンでも！と言う選択肢まである。

エンターテイメントでありスタジアムがお祭りの場であるかのようで、とても楽しい。これは「野球」だから可能な作り方なのだと思う。展開の速いサッカーやラグビーなら試合中に席を離れる事は在り得ない。

通路や飲食コーナーと直結する場合はスタジアムは常に賑やかだ。騒々しいとも言える。チケット管理は難しくなる事もありコンサートには不向きだろう。ガラス面は多く静かにしていれば外の車や電車の往来の音が聞こえるかもしれない。可動屋根は軽量であり防音性は高くはないだろう。

エスコンフィールドではウェーブは起こらない。札幌ドームでは一体感を持って出来るのに対して客席が3層に分れ、センターで客席が完全に分出されるエスコンフィールドでは難しい。可動屋根の特徴を優先した結果、レール架台の巨大な構造に拘束され平面的に広がれず、オペラのホールの様に客席をオーバーハングし重ねコンパクトな構成になっている。そのためのネガも少なくないのだけれど、観賞空間を閉鎖的に施さずにで回遊できるプランの仕組みを得た事で楽しさが生み出されている様に思う。

札幌ドームは景観も良く外構も整えているのだし、通路を合理的に整理するのではなく、人が淀みタムロ出来る余裕があり、せめてその通路空間には自然光が入り解放感があればなーと思う。スタジアムとしてはストイックで適切だと思われるけれどお祭りには向かない。

北海道では持て余す規模の施設が二つも存在してしまった。双方共に個性があり得意分野がある。出来てしまった以上は共存し使いこなす術を用意出来るのかどうか。

北広島にＪＲ新駅が出来れば、札幌駅を起点にすると公共交通機関での所要時間に大差はないはず。エスコンフィールドは日ハムの活躍こそが要なのだけれど、人々がスタジアムに興味のある間に野球文化の楽しさをどれだけ伝えられるか？が本当の勝負なのだと思う。

正直に言えば飲食は「広島焼き」「たこ焼き」「イカ焼き」「焼き鳥」「わた飴」があれば十分な気がする。持ち運びが楽で食べ易い。客席で弁当は手間で面倒だ。そもそもビールがあれば十分でもある。

札幌ドームは音響と電光パネルか映写設備を整える方が利用の選択肢を増やせそうな気がする。固く広い床があるので仮設の立体的ステージを組む事も可能だろうし、あの大きな空間を利用する術はありそうに思う。

初めてエスコンフィールドを訪ねて楽しんだ。故に札幌ドームと比較する事が出来た。優劣や正解をではなく、双方に改めて課題と可能性を思い巡らせてみた。正直、たまに野球を観に行きたくなってしまう自分が居る。