【 エスコンフィールドへ 】 その⑥ 札幌ドームを改めて眺めてみる。

改めて札幌ドームを眺めてみた。


やはり札幌ドームは綺麗な形態をしている。外構も含め丁寧な仕事の成果だろう。建築当時の札幌、北海道が費やせる最大限のコストを掛けた貴重な建築だ。特殊な形状に高価な素材、今の時世でなら不可能に思える。


巨大な内部空間はフィールドと客席に大別でき余計はなく、純粋に観戦に特化している。この時は日ハム観戦。


札幌ドームを特徴付け高価にしている一つが可動客席だ。写真の部分を平行に移動させたならサッカーやラグビー場が出来る。そのアイディアは素晴らしいのだけれど、本当に実現した事は驚きだ。大がかり過ぎて、学生時代になら考えても今は提案できないだろうな。


更に高価な仕組みの一つが天然芝の可動サッカー場だ。ホバークラフトの仕組みでこの巨大なコートを浮かし、室内に出し入れをする。野球場でいうセンターの客席は折りたたむ仕組みがあり出し入れが可能だ。

野球の場合は人工芝を使うので巻き取る事ができ、コンサート等のイベントにまで対応が出来る。『多目的』故に気難しさはある。フェンスの高さはそれらの為の必要な高さで、故にスポーツ観戦の際は距離感が生まれてしまう。



客席部分は2階相当からアプローチする。それが写真のラインとなる。


客席への出入り口は写真のように複数が用意されている。


客席の下は通路となっていて、ドームの周囲をぐるりと巡っている。大階段を上ったフロアーが客席アプローチ階(2階)となる。


客席へはブリッジを渡る。上がったり、渡ったりすると客席へ辿り着く。良く出来た演出に違いない。


ただ、閉鎖的なのが気掛かり。窓はなく照明の工夫は乏しく、足元の照度はあるものの明るさ感はない。通路空間に特化している事もあり人だまりとなる場所は乏しく、大階段に腰かけても音声のないテレビが小さくあるのみで、佇むには少し寂し過ぎる。

飲食店やトイレ等は効率的に配置されているのだけれど、合理的な通路でもあり高揚感には欠ける。

客席への入退室は管理が容易なので、コンサートの時などは運営上は都合が良いに違いない。行き慣れないと、野球の時は何処がバックスリーンで左右はどちら?サッカーの場合は・・・が分からないので迷子になり易い。サイン頼みで辿り着く事になる。

飲食物をここに買いに来て客席まで・・・も大変。

出入口を一フロアーに限定しているので、入ってからは水平に移動し、縦に長く上り下りをして自分のシートへ辿り着く。一度座れば動きたくなくなる。サッカーやコンサートでなら十分だ。コンサートの際に出歩く人は居ないだろうし、サッカーやラグビーなら席を外す暇などない。

大観衆の帰路は悩ましい。出入口を絞ったこともあり室内では上下階への移動も必要、屋外に出てからも国道36号線を歩道橋で越える必要があり、万人単位の移動を円滑にと考えると今一つなのかもしれない。

もしも直結の地下鉄『札幌ドーム』があったなら? と、考えてしまう。都市計画において近隣にスポーツ施設を集中させるなど計画が出来ていればなと思う。そのような責任ある判断が出来ていたなら、札幌ドームは日ハムを逃す事は無かったのだろうか。



話はそれてしまうのだけれど、関連する施設を集める事は今となっては困難には違いないけれど、そういうビジョンを持って都市を計画する事は大切だと思う。

例えば中島公園、音楽施設のキタラや文学施設?の文学館がある。面積規模で言えば体育館と中央図書館を入れ替えても良かったのではと思う。音楽堂、文学館、図書館がセットになった都市公園なら、とても文化的に見える。理想はココに美術館を加えられれば理想的だ。相互に関係した企画が出来る上に、困れば図書館で調べ研究までが出来る。人を招いた際にココにくれば一日では紹介できない程の文化的財産を形成してしまう。その勢いで近隣に小さなギャラリーやライブハウスでも集えばより広域の一体感を得られたはず。

札幌ドームのような巨大な施設を造るなら、少し距離はあるけれど地下鉄駅があるなら二区間内に月寒体育館があり、屋外競技場とカーリング施設がある。体育文化地域と考えて地域を整え一体的に特徴を示す事が出来たのかもしれない。月寒グリーンドームときたえーるを入れ替えていればとも思えるな・・・キリがないけれど。施設が集合すれば種泊施設までも整えられる可能性がある。中体連や高体連等々でも使い勝手の良い北海道の運動文化の中心地になれたのかもしれない。ドームで高校野球?良い場所だけれど実は移動が大変で・・・ともならずに済んだろうし。その様な文化を育む場所である事をアピール出来れば、プロ球団にも遡及できたかもしれないな。

今のドームは孤高の存在となっていて、忘れてしまおうと思えば忘れてしまえるポジションにある。用のない人には無用な存在、その巨大さが仇となっている。失えば二度とは立ち上がれない傷を都市に残すに違いない。


もちろん、各地域に必要な施設はあるのだけれど、都市規模の地域が担うべき責任はあるはずで、但し無限に人口が増え需要が高まる事もない有限の資源をどのように計画し活用するのかは常に結果が求められる。本当は、北海道の地域の都市化は近年の事なのでもっと計画的に出来たのではと思う。少なくとも様々を調整する機会はあったはずなのに、勿体ないと思う。

 


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