【 佛願寺 】


本堂は古く、建築された場所は今とは違うらしく、曳家をして今の位置に落ち着いて久しい。この本堂を曳家するとは?信じられない事なのだけれど、携わった大工の棟梁に直接お聞きしているので間違いない。この本堂は通りの正面に聳えていて、いつも印象的だ。「お寺がある。」事がどれほど町並みに寄与していることか、これは幼少からの記憶においても欠く事が出来ない。

この本堂を残して会館や庫裡等の施設を設計したのは遥か昔の事になるのだけれど、敷地と本堂を何度も何度も設計者目線で眺め思案した。要望のままなら、この本堂のヴォリュームを遥かに超える規模の建築が建っていたはずで、そうなれば町並みの景観が壊れてしまっただろう。地域との関係こそが存在意義であり、誇示することなく迎え入れる建築、空間を設計している。



先に載せた写真は町並み正面、建築は70mを越えるだろうか、巨大だ。けれど威圧的には設えていない。本堂は境内の樹木の影になっているけれど稜線は見えていて、気に障る事無く、しかし確かに存在している。



阿寒方面から北見へ続くバイパス路、町の中心の美幌へ続く道の交差点からの眺め。この時に本堂が立派に聳えるシーンを大切にした。この大きな建築がお寺である象徴は町並みにおいてとても重要だ。周辺を含めると高低差のある交差点からの眺めでもあり、後付け車庫がちょっと邪魔かな。壁を設けたくなる。



約15年前に加えた納骨堂が手前右にある。境内を横から眺める。この規模になると「稜線」を作る事が出来る。雨上がりの朝、空は晴れていて清々しい。



写真中央の下、やや右にエゾリスが写っている。ぐるりと巡って帰ろうかと思えば気配があり、何だろう?と眺めると忙しく何かを頬張るリスが居た。ここで冬を過ごすには十分な環境とは思われないけれど、何かに誘われて迷い込んだのか。栗の木もあるのでそれが目当てだったのだろうか。

今回の道東では唯一天候に恵まれた朝の一コマ。