【 間取り・・・プランを科学する。】 設計考察 ③ 光明寺の庫裡

具体的な一例として、今取り組んでいるお寺の
庫裡は、私なりに良い解答を得られたと思う。
二世帯住宅となる庫裡を事例にして。

その前に、二世帯住宅のもう一つ大きな問題は、
それが親子関係に在る場合、親世帯は何れ空き、
一世帯住宅になる事から免れない事だろう。
『貸す』事が出来ると問題を先に送る事も出来る。
場所が良く、利用者が得られる環境なら或いは。
けれど、多くは結局はどう使うか思案し、使えず、
持て余す事になってしまうだろう。余しても、
維持メンテナンスのコストは掛かるので負担にしか
ならなくなってしまう。

これは実は一世帯住宅でも子供室が同じ問題になる。
どう頑張っても多くは子供が居るのは20年程だろう。
末永く同居するのなら、その時は増築を考えたい。
一般には育ち家を後にする。その後は使われない部屋を
維持してゆく事になる。モノも増えて客間としている
和室が納戸化し、気付けば家の半分が使われない部屋、
終の棲家を考えて建て替えを!と言う人は少なくない。
「古い家で寒いから」など理由付けは出来るのだけれど、
将来にまで対応できる計画の無い住宅では必ず出会う
問題になる。それが二世帯住宅なら必須の事になる。


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お寺の庫裡、二世帯住宅でもあった。
お寺の場合、世代を経て受け継がれる事が前提になる。
一般住宅とは異なる条件は、それはそれで悩ましい。
100年後にも使える庫裡を、真剣に考える必要がある。
試しにクライアントと、50年程度先の、2,3世代の
後までを考えて見た。6人~8人の最大人員が住まう
時もあれば、2人だけという時期も想定が出来た。
住まう人、世帯に柔軟に対応しつつ、維持管理のコストを
最小に出来るプランの構築には本当に苦労をした。

先に書いた記事、応接については、その検討の最中に
生み出された解答になる。とても特殊な解答だ。
図版にしたのが掲載のもの。玄関とホールを共有し、
各世帯をあたかも一つの個室の様に考え、共有の
居間として応接室(RECEPTION・ROOM)を考えた。

この応接はお寺に直結し、容易に人を招く事が出来る。
それでいて、各世帯は独立出来、二世帯住宅として
のみならず、お寺の庫裡として将来に渡り機能出来る。
また、各世帯の個室は家具を使って間仕切る仕組みを
使い、大きな一間の空間を、その時折で要望される
スペースに分割が出来る様に施している。
維持監理コストを下げるべく建築規模をコンパクトに、
けれど自由度は確保し、お寺の応接も担うプラン。
これは本当にクライアントとの共同作業だった。
ここに至るまでの労は果てしなく、今はそれが本当に
運用できるのか、問われ始めている。


こういう複雑な問いは、設計では珍しくはない。
どのような建築、住宅の設計でも必ず在る事だ。
解法のマニュアルが存在しない以上、自分で考え
答えを導くしか無い。それは特殊解に違いなく、
得る労は計り知れず、時に正解はないかもしれない。
それでも、創らなければならない。それが設計だ。

このプランは本当に気に入っても居る。
自分が思う理想とは離れた事は素直に告白する。
けれど、クライアントと一緒に求めた成果は
やはり期待がある。成果が問われるのは今後だ。