本堂

 

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本堂と言うのは、お寺にあっては特別な施設になると思う。御本尊の在る場所であり、その外観は一般に大屋根の伝統的な建築物で、正に”お寺”の象徴的な姿が想像出来る。宮大工を使い、太く大きな木材も使い、建築は非常に高価だ。その甲斐もあり、その存在は一見して”お寺”に見える。ところが、敷地の条件から大きな木造建築が難しい等の理由で鉄筋コンクリート造や鉄骨造とする建築の選択肢は今では少なくない。そして、コストの面から伝統的な形式を選択出来ない、またはしない選択もある。では、そのような伝統的な存在に頼らずに”お寺”にすることは出来るのだろうか?・・・という事が設計当初からの悩みであった。

 

更に特に悩んだのは本堂、その室内について。一般には”内陣”と言い、御本尊のある特別な御浄土を表現する間がある。一般の方がお参りする際に訪ねるのは外陣といい、内陣とは対となり、内陣に向き阿弥陀様を拝む事になる。そして、その内陣も伝統的な形式はとても高価になる。伝統的な内陣を用いずに”御浄土”を表現する事は出来るのだろうか?・・・これも設計当初からの悩み、光明寺では特に強い悩みであった・・・

 

本堂のデザインは昨年10月に基本を決定した。決定は1/30模型にて。それ以前には1/50模型やパース等を使い様々に数々検討をしてきたし、スケッチも描いた。事例の調査や見学も行っていたものの、正解はやはり存在はせず。創らなければならない大きな課題だった。

貼った写真は、その内陣の要となる、阿弥陀様の住まい?となる空殿+須弥壇の設置工事が行われた、その夜のもの。昼間はまだ散らかっていて撮れなかったのでした。

昼間は昼間で心地良く感じられた事もあり、照明時はどうかと夜まで残り眺めた時の一枚。特に照明器具は多く設置している本堂は、照明の点灯消灯の選択肢は多く作る事が出来た。見積調整で何とか削らずに残せて良かった。これは全点灯時の一枚。先に貼った一枚は、最小限の照明点灯時のもので、特に印象的な光の写したもの。

外陣と内陣は伝統的には外陣柱と折戸の建具、床面の高低差で明快に区分されている。光明寺の本堂室内では外陣と内陣は最小限の区分のみとし、一体的な空間としている。オープンな空間故に面積以上に広がりのある空間を見せている。けれど、その対となる陣が混じり区分を失わぬように節度ある空間と出来るのか?も試されていた。柱や戸で仕切らずに、空間の質や緊張感だけで仕切ってみせる!・・・出来たかな?

ここに記しているのは実に感覚的な事で、写真で説明をしても理解は出来ない事、百聞一見にしかず、という経験に基づくもの。空間の妙、これは必ず在る。再現は不確かで建築設計手法にマニュアルのない、正解のない設計に他ならない。この設計ではクライアントの要望、施工者の協力、ここでは仏具工事業者の理解と私の最大限の努めの成果になる。ちなみに、実際は写真よりも、もっと良い。