a sence of scale

『スケール感』とは『a sence of scale』と訳せるらしい。ニュアンスはどこまで共有できるのか分からないけれど、先日は外国人のオーナーさんと打ち合わせをした。言葉ではとても説明が出来ないのは、相手が日本人でも同じこと。そこで、模型を携え訪ねた。単純な事ながら、模型に『人』を置くと良く分かる。人が小さく見えるのか、大きく見えるのか、それが問題だ。この計画案は他に優先順位もあり難航してはいる。ギリギリ踏みとどまれるかどうか、緊張の打ち合わせとなった。

 

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このプロジェクトでは過去にブログにパースを掲載したことがある。パースが綺麗でも現実が綺麗とは限らない。模型が綺麗でも現実も綺麗とは限らない。けれど、現実が綺麗なら模型もパースも綺麗に見える可能性は高い。そして、パースよりも模型の方が間違いなく嘘は付けず現実に近い。何故なら、大きさの違いはあれど立体の相似形、人を置く事で疑似的に実際の空間を追体験する事が出来る。
そこは、これまで様々な実体験のある強みがいきる。A1サイズの全体模型は1/100スケールではあるけれどポイントは逃さない。

『人』との関係が円滑な建築は心地よさを得る事が出来る。人の大きさが見える空間スケールでは人が知覚する感覚でデザインをする事が出来る。例えば塗壁の微妙な凹凸、木肌の質感、窓台の厚み、梁材の大きさ、柱の太さ・・・そういう実感のある質感、素材で建築をデザインする事が出来る。スケールが越えてしまうと、そういう様々は小さくなり見えなくなってしまう。丁寧な塗壁も質感が見え無くなればハリボテに見えるかもしれないし、良い表情の木も色しか見えなくなるかもしれない。そういう大きな建築を扱う時は、違うスケール感で考える必要がある。この規模の建築の計画をヒューマン・スケールで設計出来るなら?それはとても楽しい。『人』と良く馴染む空間を志したい。

 

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写真ではなかなか伝わりません。建物は450mm、手前の壁は600mm程違えて様々なバランスを確認した。何が空間にスケール感をもたらすかの実験は非常に面白く、また緊張感のある設計過程です。どんな違いが生まれるのか?模型は手元にあるので興味があればお見せ出来ます。

本当は1/50スケールで模型を作れるとより明快に伝えられるのだけれど、畳2枚分の模型を作るまでは、なかなか出来ないよ。この違いを疎かにする設計に大きな期待は出来ない。拘れば切りはないけれど、違いを違和感ではなく心地良さに導きたい。