Compact house 考 その① 想定条件

最後まで書き入れれば、きっと長編になると思う。どうせ、夜更けに酔いながら書く事になると思うのでグダグダ感を否定できないけれど。どうしてそうなるかと言えば、この取り組みそもそもが夜更けに楽しんでいるものだから。

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これは10年程前から温めているプランになる。しばしば、仕事とは別に設計を試みて過ごす。例えば「敷地」を勝手に設定したり、実際に売られているものを選んだり、想定せずであったりする。要求プログラムも様々となる。多くは4人家族が住まえると最低条件にするだろうか。考えるのは『住宅』が多い。

業務で取り組まない挑戦や冒険が出来る上に、答えを焦らずに様々な可能性を探る事が出来る。どこかの時点で完結する事もあるものの、それが目的でもない。アイディアを探しているという方が適切かもしれない。そういう個人的な試作プロジェクトが実は幾つも在る。直ぐに終えるものもあれば、この画像の様に10年近く試み続けているものもある。実のところ8年前に一度、完結させていた。とてもお気に入りでその後業務にエッセンスを活かす事も出来た。

その計画を数年前に、よりコンパクトに出来ないかと再開しはじめ、2年前に「コレ」かなと辿り着いた時の断面図になる。この断面図は、2階左手にLDK、スキップして右手にBR(寝室)、1階左手に半地下のアトリエ、右手はENT(玄関)と浴室等の水廻りを納めている。「光の映える白い壁」、これは健やかな室内を得られる事もあり好きだ。ある時、撮った写真を飾ろうと思い立ち、壁をグレーにしようと試みた。

試作の前提は「私が住みたい住宅」と言う事になる。アトリエは仕事場、欠かせない。このスペースを子供スペースに転化出来るので4人家族の家になる。施策では4人家族+アトリエと大きな家を考えた事もあるものの、そこは割り切って取り組んだコンパクトな住宅がコレになる。スキップする構成は平面では分かり難い上に、スキップは相当な検討をしなければ肥大してしまうので、割と詳細まで検討をしている。

この断面を得たのは2019年10月の事。

正直を言えば、要求を固定しない計画は終われない。可能性の無い方針なら終わってしまうけれど、可能性を覚える方向性なら終われなくなってしまう。それはそれで温め甲斐があるので有益なシミュレーションになる。

この計画はスキップフロアーもあり、階段室を挟んで上下左右に4スペースが様々なヴォリュームで展開する。視線を妨げ一間とはせず、けれど閉塞させずに連続する空間として計画をしている。再開の切欠には【 MoAi in ny 】があるのだと思う。極めて極限規模で二世帯住宅となった実施案に触発されている。一家族でならどこまで攻められるか?試したくなったので。写真を飾ろうと思い立った事でアトリエ付住宅になったのだけれど、割り切りつつも不足のないものを求め至る。

という試作プロジェクトが多々。表題の『Compact house 考』は同じく夜更けの寝る前に取り組むプロジェクトで実現を考えたものではない。ただ、具現出来る十分な可能性を持つものとして真剣に取り組む。まぁ、お酒が入りながらではあるのだけれど。

『終の棲家』を前提とする最小限居住空間の創造が『Compact house 考』だ。

・・・後に結局、アトリエを設けたり、4人家族の想定を含めたりあちこちに発展しては行くのだけれど。


【Bed Alcove】

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【Bed Alcove】これを一つの要求キーと考えた。BR(寝室)は通常はアルコーブではなく部屋、或いは部屋に準じるスペースと考える。ただ、そうすると必然的規模は大きくなる。一人か二人が住まえるだけの終の棲家なら、部屋ではなくリビングに付属する凹のスペースでも就寝に支障が無い。これなら極限も可能だ。極限ならテントでも十分ではあるので、「豊かな生活」環境を必要条件として試作を試みている。
 

DOMA

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DOMA】ドマのある室内も要求キーの一つに加える。「豊かな生活」に必要な装備だと思う。写真は【 DOMA/道南(South Hokkaido) 】の一コマ。北海道では縁側も難しい。私の知る限り北海道で設けられた事例は、潔い建築である有珠の善光寺しか知らない。有珠の善光寺は大好きなので年に1,2度は訪ね、茅葺屋根の下に広がる開放的な縁側を楽しむ。内部のような外部か、外部の様な内部なのか、不思議なオープンスペースが余りに魅力的だ。この住宅を設計した時は善光寺を知らなかった。元々の私の求めた楽しいスペースになる。
【 Bookshelf 】【 DOMA/Yamanote 】【 DOMA/Hachiken 】【DOMA/Hakodate 】【 DOMA/NATORI 】、これらはドマのある住宅、思えば数多く用いてきている。どの住まいも各々に楽しまれている様に思う。完全なる土間を実用するのは難しいけれど、より外に近い室内空間であり、内部よりもバルコニー(外部)により近い空間。フローリングではなくタイルやコンクリートの床なので水に濡れても土で汚しても気に病まずに済む場所としている。草花を置いて水を撒き、こぼしても支障はなし。自転車のメンテやスキー用具やキャンプ用具のメンテも支障なく行える場所。

ドマの必要性は更に室内の暖房環境からでもある。窓を多くすれば冷気侵入は免れない。コールドドラフトは一段低いドマで一度妨げ、寛ぐリビングに直流する事を免れている。このドマを床暖房とする事で快適な暖房空間を導く事も考える事が出来る。

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実際にこんな具合になれるので、やっぱり、欲しい。
北海道は寒冷地、気密断熱のない室内はリスクが大きい。それこそ善光寺でもなければ現代の北海道では気難しい縁側的な空間を気密断熱の内側に取り込みつつも「外」により近い空間を私は「ドマ」と呼ぶ。このドマはENT(玄関)から連続する事もあり、断熱気密上は室内に違いないものの、室内おいては寧ろ「外」になる。

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私の好きなこの写真は【 DOMA/Yamanote 】の一コマ。ドマに佇む猫さんは野良らしい。警戒心の強い彼女はフローリングまでは上がる事がないものの、このドマには心許したのだそうだ。私が訪ねた時に出会ったこの瞬間が証明したのは、警戒心を失わない野生が室内にも関わらず心許した空間が、ドマだ!

野良ですら心許すなら、飼いならされた人間なら間違いないな。その異質を楽しめる環境を得られれば、室内は変化に富んだ豊かさを選らるのではないかと思う。慣らされているのでなく、慣れて自由に使えるなら、それは楽しい場所になる。


【Compact house 考】は終の棲家となれるBRはアルコーブでドマのある、豊かな最小限
住宅空間の考察になる。その②以降に様々、時にグダグダに書き始めたい。最後まで書ききれるか?それも試してみたい。