記念塔のモデリング その⑧ 3Dモデルを眺める。 

3Dのモデルを眺めて見る。
架空の空間に建つ建築、ここでは私のPC内に疑似的に存在をしている。実存しないものの、実際に建っている不思議。

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塔頂部。コールテン鋼の縦割を細い目地で再現した事もあり、線の集積具合は非常に密だ。何より、曲面の大目地が不気味だ。斜めだものね。


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塔の足元を眺める。透けて奥の造形も線表示しているので、何が何やら複雑すぎる。最初にコレを作ると知っていたなら、諦めていたかもしれない。見えている線は全て、自分で立体的に作らなければならないのだから。前回のその⑦で示したように、順を追って製作する事で得た成果。

模型製作も同様なのだけれど、何をどう作るのか?実際に工事をするかのような「計画」が欠かせない。他の人が取り組めば、違う塔が立つに違いない。ただ、怪しい図面しかない状況からの製作となれば、トレースした曲線からそれらしく見える程度でOKしてしまう人もあるかもしれない。

私は短い時間ではあったけれど、きっちり追体験を果たした。この塔を製作した施工者、相当というか、きっと、泣きながら施工図を描いたのだろうな・・・
現場事務所に閉じ込められた若者が数名、数式に値を入れて算出した数値を図面に落とし、雲形定規で結び・・・特にゴジラの背板(曲面の△)の全てをCADではなく手描きで形状を確定させるのは、やっぱり、泣きながら描いたのだろうし、実際に施工する職人は、実測を重ねて加工して設置したのかな。


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塔本体の最難関は曲面に入れる目地。斜めに切り込んでいる。この絵は分かり良いだろうか。複雑すぎる。


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製作過程では一々、見る角度を変えては何が出来上がっているのかを確かめつつ。


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改めて眺めても、ゾッとする。


そうは言っても、実は私自身も設計では曲面は使うし、斜めに切り落とすのは常だ。三次曲面でというのは経験がないけれど、幾つもの半径の円弧を重ねた複雑な局面を斜めに切り落として勾配の違う組み合わせの屋根を掛けた事もある。絵に描ける以上は解析が出来る。模型や3Dを作る事も常にしているので、どう作るか?を考えるのは当然になっている。その複雑な円を持つ建築の時は結局・・・全ての柱と間柱の高さ出して施工者へ伝えたと思う。描いたのは自分だし、強烈な仕事量ではあったけれど後始末まで確実に。

その必要がありデザインされたものが複雑な場合、どう作るか?デザインされているのかを細部まできっちりと表現されているかどうか?完成度はより強く問われる。何となく・・・など、後は施工者に任せる風では説得力は微塵も生じない。その意味において、この塔のモデル作業は、ある人の取り組みの完成度の高さ、得た成果までを知る機会となり貴重な体験となった。