お隣さんの栗の木

セミが夕方に鳴いていて、それがどうも道路側の電柱から聞こえてくる。夕暮れでもあり暑さというよりは、場所を間違えて困っている風の声だった気がする。

3m程先の電柱で鳴くセミを、なかなか見つけられない。こっそり隠れながら探していたけれど見つからず、窓から体を乗り出し瞬間に飛び立ってしまった。夕暮れの影の多い時間帯だったとしても、まさか電柱に擬態してしまうとは。

その日もガリガリ君で涼を得た、その後だろうか、窓の外の気配に気付く。流石にもう知らないフリが出来ないだけ大きい。イガとなる『針』が先ず育ち、子孫を残すための種が育つ前から防御を完璧に果たす。おそらく、殻の部分は今は相当に柔らかいはずだ。だって、日に日にとまでは言わないけれど、3日違うと大きさがまるで違う。ああも一気に膨れるように育てるのだから凄い。これからの2ヶ月のために生きていると言っても良い。

膨らむの眺めるのは、夏が過ぎ去るのを観察するのに等しく、既に少し寂しい秋を想わせる。


対して春のサクランボはまた違う面持ちだ。晩春か初夏に食べ頃を迎えるこの果実は、実に甘く。今年は未だ行かずの帯広、実りはどうだったのだろう?