エゾシロチョウ

或る日、窓際室内で羽ばたきの音がした。スズメバチとは違う大きな羽音、眺めるとそれは白く奇麗な蝶だった。気付けば窓の外にはヒラヒラと白い蝶が群れを成し飛んでいる。昨年まではモンシロチョウだと思っていたのだけれど、それは一回り大きな立派な蝶だった。

網を出せば採れそうな程に近くを飛んでくるのだけれど、そこは小さな昆虫、目視では種別を判別出来ない。そこでカメラを持ち出し・・・とうとう300mmまで構えた。ところが想像通り、飛んでいる蝶など撮れるわけがない。晴れた夕暮れ前、30分は眺めていたかもしれない。


この蝶は群れる。これはカップルかな?


この蝶は群れる。クロアゲハが夕立の水溜りに群がるのは知っているけれど、蝶が群れを成すのは身近ではあまり見た事がない。

陽が傾きかけた頃に寝床と決めたのかどうか、止まっている所を写す。羽が綺麗に撮れたので『札幌の昆虫』図鑑で種を割り出す。おそらく「エゾシロチョウ」に違いない。似た種に「スジグロチョウ」がある様子だけれど、その特徴は見受けられないのでエゾシロチョウで良いのでは?

この蝶は卵も固めて産み付けられ集団で育つ傾向があるらしい。ややゾッとする蛹の集団も見つかる。その写真はやや気持ち悪さが強いので、ここには貼らず。

羽化した蝶はその場所を離れず、ここで育つのかもしれない。何処をほっつき歩いているのか?という蟻に似た類が蝶にも居て時々紛れ込み、遺伝子の多様性は確保がされているのかもしれない。見当たらない日もある様なので群れでアチコチへ遠征しているのかもしれない。

実は、これらは全てお隣さんの庭での事、アトリエの窓から観察する。今は未だ実も見えない栗の木の周りを賑やかに飛び回っている。


止まる瞬間の飛んでいる蝶を撮る。アゲハのような勢いだ。大柄のアゲハ蝶の飛翔能力はヤンマを思わせる程でもある。


あの大きな羽を巧みに使い、自在に空を飛ぶ。アトリエに迷い込んだ蝶も僅かな窓の隙間から入り込み、一通りアトリエ内を探索した後に「ここに欲しいものはない。」と判断したのか簡単に隙間から出て行った。居付かれては困るけれど、少しは興味を持って長居しても良いだろうに。

大きな羽は抵抗になりそうに見えるし、実際、単に「ひらひら」と飛んでいるだけに見えるけれど、この写真を眺めると頭は少しもブレていない。サバンナを駆け巡るチーターが、足も尻尾も腰も全てが地形や速度に応じて躍動しているのに頭は常に一定に似て、目は微動だにせず安定し獲物を狙うかの様。

羽ばたく度に頭が揺さぶられたなら蝶でも一気に酔うだろうな。


4枚の羽は自在に駆使できる様だ。


栗の木の樹幹を縦横に飛ぶ。目がイイのだろうか?触角が高感度で周囲を関知出来るのだろうか?これを人が実現出来るのならドローンは一気に別次元に進めるに違いない。茂った密な葉の中を、どうしてこうも大きな蝶が見事に追いかけっこ出来るのだろう?

エゾシロチョウは小さなキアゲハくらいに大きく、ヒラヒラのモンシロチョウよりも速く飛び、集団で密な葉の中を延々と飛び回る。初夏の蝶らしいので観察出来るのは今だけかもしれない。

頭(脳)を使って行動する哺乳類の観察はマンウォッチング的だと思う。人の抱く感情とはまるで違うかもしれない昆虫や植物、容易に人知を超え眺めるのは実に興味深い。