オオスズメバチの住環境探し、かな?

毎春遅い時期にスズメバチがやってくる。窓を開けていると入ってきて、あれこれ物色し過ごしては出て行く。毎年の事なので、何らかの経路になっている気がする。秋10月には二年連続で成虫で越冬するオツネントンボがやってきた、私のアトリエ。

今年もスズメバチがやってきた。ゴロリと横になっていた午前中、室内で大きな羽音がした。お尻の縞模様は上程に細い線があったので、どうやら「オオスズメバチ」らしい。「札幌の昆虫」図鑑で確認をした。明らかに30mm以上はあったのでサイズ上も間違いない。

ひょっとすると春に彷徨い来るのは女王蜂なのかもしれない。エサを探している雰囲気でもない。巣をつくるのに良い場所を探している風に見える。収納棚の隙間や、椅子の裏、果ては掛けていたズボンの足穴から中を探索していた。幸運にか残念ながらか、お目に適う場所は見つけられなかった様子、15分くらいだろうか?アトリエのそちこちを探査した後に窓から出て行った。

ネット調べによると、時速40kmで飛び、一日に100kmも移動する事が出来るらしい、とんでもない昆虫だ。しかも、細く開けた窓から自由に出入りする上に、室内奥の小さな凹凸に沿って器用にゆっくりと飛び回る事も出来る。草の茂った藪の中でも飛べそうだ。エサの臭いはしていないはずなので、今日の行動が物件物色だとすると、目で見て判断しているのだろうか?

女王蜂の最大の仕事は子を産む事に違いない。繁栄出来るだけ十分な規模を確保しなければならない。しかしながら実は最も重要な仕事は、「住まう場所選び!」なのかもしれない。ココは電車も通る比較的街中、適う場所は限られているに違いない。

スズメバチも生物なので「快適な住環境」が必要な事は疑えない。雨風を凌ぎ、適当な通風や日当たりは欠かせず、且つエサや巣作り材料の豊富な場所が必要だろう。毎年、春にやって来るのが女王蜂だとすれば、やはり近所で脈々と血筋が受け継がれているのだろう。

仮に気に入られて生活場所に私のアトリエが選ばれるなら、ちょっと誇らしいなーと思う。攻撃的とはされる昆虫だけれど、壁を背にして本を構えた状態で眺めるなら、想像以上に執拗で丁寧に場所を探す様は、それが母なら当然だろうなと思えた。まぁ、アトリエにスズメバチの巣が!となれば来客は減るだろうし仕事に支障は出るものの、彼等が好む場所なら住み心地は良いのだろうなーと思う。

スズメバチは夏に活動しサイクルを終える。越冬は女王蜂のみで地中や朽木の中でとされている。巣は夏場を快適に過ごせる場所を選らぶ必要がある。きっと良い場所を適切に選ぶのだろう。コツや秘訣はあるのだろうか?私のアトリエが選ばれなかった理由はなんだろう?気になる。二度三度来るなら優良物件か?明日も少し窓を開けておこう。



■生活環境

人の選ぶ場所は経済活動を基にする事が多い。住まうに適当な場所が選ばれる事の方が珍しいように思う。縄文探検で企画する際は多くの場合、実地を見る様にしている。今は何もない痕跡のみの場所も、訪ねると「なるほど!」という場所が実に多い。寧ろ、現代の経済活動に縛られずに選ぶのなら、こういう場所だろうなーという実感を得られる。

現実にはインフラは欠かせないし、仕事や学校、病院やスーパーなどの利便は欠かせないものの、そちらが勝ってしまうと生物的に住みたい場所!とは異なる傾向にある事は否定出来ない。

定住ではなく移動する事が前提となる多くの生物は、自由だ。木々なら自ら環境を構築するし、哺乳類に鳥類、魚類に昆虫達は好む場所に住んでいる。豊平川のモズクガニも、自分がカニならココ!だという場所を選んで居るし、豊平川のホタルが居る場所も望ましそう。湿った場所を好む昆虫はやや苦手ではあるものの、風通る場所のクモ類は嫌だけれど、例えば今時期に室内に入り込む綿毛を持つ植物が吹き溜まる場所なんて、なかなか良い場所に見える。

流れの強さは程々で良く淀み、けれど閉鎖的でなく風通しが良く、適度に陽は当たり、けれど照り付けられる事はなく、周囲は乾燥せずに適度に苔類もある具合。人は断熱や冷暖房の装置を用いて環境を構築する事が出来るけれど、理に適った場所でなら省エネルギーに環境を構築出来る。建築は、そういう場所で住空間を助けるのであれば理想だろうか。性能の評価が出来るようになり、実設計において規制は強くなる昨今、本気でエネルギー消費量か環境負荷物質の排出を規制するなら全く違う視点で取り組まなければならないだろうなと思う。高性能住宅の半分の面積で適度な性能の住宅が建築可能なら申し分がないし、それが高性能なら世界は変わる。慎ましさや必要十分を知る動植物の日常を観察する機会は面白い。しかも、それが恐れられるオオスズメバチであっても、彼女が懸命に家の場所を探す姿は刹那であっても興味深い。

 

長々と、グダグダを書いた。