この世の終焉のような、日常の朝。


夜更かしの朝、屋上から眺める6月の陽は随分と北から・・・街灯もコンビニの看板も消灯した暗闇から昇る。日常の朝は相変わらず常に劇的だ。


東を向いたアトリエの窓から平行に差し込んだ陽差しが壁に光の穴を開ける。少し前に空が白み始めたかな?と思えば、ハッとさせられる。光の部分だけが焼かれているのがわかる。少し前まで夜だった名残は室内の隅でコントラストを強く鎮座するのだけれど、直ぐに追いやられ昼夜は室内も入れ替えられる、朝。


街中を避けたくなる「よさこい」の季節、近所には「のぼり旗」が並び始め、中島公園には看板や電灯用の配線が成されプレハブが立ち「札幌祭り」の準備が始まる。年に一度くらいはと屋台へ行きたい衝動を覚える季節、週末にフランス中部?にあるサルト・サーキットでは伝統の『ル・マン24時間耐久レース』が行われる。

まるで知らないに等しいのだけれど、レースマシンに積まれたオンボードのLIVE中継があるのを知ったは随分前かもしれない。以来、楽しみにしている自分が居る。最速カテゴリーでポルシェがハイブリッドを走られていた頃、その音が印象的だった。エンジン音と同時に加速時にはモーター音、減速時にはシフトダウンの音と共に回生ブレーキ音の電気的な音が重なる。耳慣れないのに不思議なくらい無駄なく心地よく聴こえてしまった。

今年はトヨタオンボードを眺め始めたけれど、エンジン音が強めだった。フェラーリが少し野太いエンジン音だけれど嘗てのポルシェハイブリッドっぽくて良かった。フェラーリなのでV10やV12を高回転で回した音・・・ではなくV6ターボ?らしい。良く眺めた一つがグリッケンハウスのオンボードLIVE映像で、こちらはエンジン回転数やシフト、ブレーキや速度等の他にコース位置までも表示と情報量もあり素晴らしい。13kmに及ぶコースには時速300kmを超えるストレートが何本もある。最もスピードの出る最初のストレートは右へ緩やかにカーブしながら始まる。7速7000回転以上の全開から一気にブレーキを立ち上げ3速までシフトダウンする、その速度差200km。夜は格別で、壊れないのかな?と不安になるエンジン全開音が切り替わるとそれは一気に減速する合図で、前走車が無ければ暗闇から唐突に現れるシケインを当たり前の様に曲がり去る。映像ではブレーキの目印も定まらず、何を持ってブレーキを開始するのだろう?と本当に不思議だ。見誤れば曲がり切れずにガードレールへ、恐怖から早めに減速を始めたのでは一周で何秒もロスしてしまう。

ただ、そこはプロ。基本的には実に心地良く安定した緊張感に満ちる音を響かせていた。

夜更けに仕事をしていてBGMにするのに丁度良い!と気付いたのが始まりだったと思う。今こうして仕事をしている最中に何処かで誰かも寸分の隙を許さぬ世界を生きているのだ!と音が示してくれる。大学受験勉強の頃に聞いていたオールナイトニッポン2部の明け方に近いかもしれない。緊張感を失わない夜。

車、アクセルもブレーキもベタ踏みなんてまずしない。パニックのような急ブレーキが常、加速時には遠慮なくアクセル全開・・・更に電気アシスト音とは現代的で新鮮ではあるけれど見知らぬ事なのに腑に落ちる。

数日後には札幌祭りが始まり、その後は中島公園に「PMF」の旗がたなびくはず。今年は念願のリハーサルへ行けるのか?