真に深淵の隈

ひょっとして水平線の奥まで星が見えるのでは!と期待したものの、最も遠くの『奥』は闇の中で定かではなかった。間違いなく深淵の闇を見る事が出来た。

雲は薄く低く、切れ間からは星が覗いていた。波は遠くの街の灯を浴びて輝く。

ここは人生で最も多く訪ねた海辺、直ぐ傍に交通量の少なくない道があるのに波音しか聞こえない。風が強いので珈琲を淹れる為に湯を沸かすのは難しく、ただ、眺めるだけ。

『光』が好きで設計をしている。その光所以の「明るさ」を知るには、対極にある隈たる「暗さ」を知る必要がある。対比なしでは明るさは輝かない。甘味や苦みを覚えるには酸味が必要な珈琲に似る・・・かな?

人知に寄らない大きな存在と向き合う事、時々は確認しておかなければカン違いしてしまう。どういうわけなのか、吸い込まれる様に心奪われて過ごしてしまう。