豊平川を遡上する。

いつもの豊平川の、とある場所には『堰(せき)』がある。どうやら『床止め(とこどめ)』と呼ぶもので、かつ落差があるので『落差工(らくさこう)』と呼ばれるものかもしれない(ネット調べ)。

サケやらマスなら、この1m程の段差は平気で登ってしまうのだろうな。


その『落差工』の頂上の一枚は街並みを背景にして。何だか少しカッコ良い。

ここを遡上する生物が数多くいる事には気付いていた。街明かりで夜も明るくカモメやサギが好んで陣取り、餌場としているようだ。では、どのような水生生物が遡上するのかと言えば、それは、あらゆる生物だ。



行けば必ず会えるのが「ハゼ」の類だ。川底に住む魚は吸盤でもあるのか、ピタリと堰の底面に吸い付いて留まり、体をよじらせながら少しずつ登って行く。体力は使うはずで、登っては回復を待つために停滞するので、おそらくはカモメやサギの筆頭の餌になっているに違いない。

流水の遅くなる端を選んで取り付き、登る。鼻先で波を割り流水の下に潜り込むように腹をピタリとくっつけている。腹下に水が回れば流されてしまう。5cm~15cmくらいのハゼは1m程の堰を当然のように超えて行く。



流線形の「ウグイ」などの魚は小型ではあっても、そもそも遊泳能力が高い。堰を超える時は下方から力強く一気に登り切るようだ。ただ、眺めていると失敗しているものが実に多い。端の流れの弱い場所は水位が低く、中央付近は水位は十分なのだけれど流れは強く難易度は高い。あちこちで様々に試して経験を積むのだろうか。



驚くのは「エビ」だ。6月に抱卵していたので1歳半程だろうか、小指の爪先程の小さなエビですら当然のように登って行く。彼等には足がある。その足で真っすぐ歩いている光景は新鮮だ。本当に山登りをするかの如く歩いている。

かき揚げに丁度良さそうな大きなサイズのエビは、どうも徒党を組みたがるらしく、群れて登りだす。夜更けに10匹、20匹の単位で突如として始まる行進はかなり奇妙な光景だ・・・夜に歩き回る生物、割と素直に初めてエビに不気味さを覚えた。目指す上流には何があるの?皆で何処を目指しているの?思慮ある生物に見えてしまう。

写真のエビは、まるでペアのようなのだけれど実際は、小ぶりなエビが大きなエビの後ろに着いて水除に使い登っていただけだろう。ウグイの類が苦戦する堰を容易に登って行く。



最後にカニが登る。写真は、おそらくはモクズガニの1歳半?の子ガニ。小さいのに盛大に水しぶきを上げて登りだす。滑る床にも関わらず、足はこの時のためにあるとばかりに実に力強い。ただ、臆病なカニは照明を当てると警戒して逃げ出してしまうので観察は難しい。

エビ、カニの足のある生物は割と事も無げに越えて行くのを見ると、足のある昆虫もおそらく困ることなく登るに違いない。その意味では水中で無敵の遊泳能力のあるウグイの類が越えられずに難儀しているのが可笑しい。彼等は中央の魚道を使うのかもしれない。



堰を越える魚を撮ったまま、街並みをとると御覧の通りにボケた。これはこれで綺麗。



強烈な暑さが続き、雨も乏しく、川の水位はかなり低い。堰を越えると水は一気に広く浅くなり、ピチャピチャとした流れになる。



先週までは・・・居間に置いて在るおもちゃの温度計は壊れていたのか、朝から35℃を越えていた。ところが今宵は半袖短パンでは寒い程に涼しい。しかも、気付けば夜が長い。夜明けが一時間は遅くなっている。もう、そういう季節なのか・・・天気予報では週後半から再び暑そうなのだけれど。