環境性能

現在の指針や基準では評価の出来ない決定的な『環境性能』がある。それは形態だ。断熱性能や省エネ性能、メンテナンスのし易さなどはもちろん重要ではあるけれど、最も大切な事は、それをどう使うか?だ。無駄のある形態では数値性能がどれほど優れていても、無駄を拭えないかもしれない。

例えば、全面ガラス張りがカッコいい!と、ペリメーターゾーンの工夫もなく南側をガラスで覆った住宅など、今なら地獄のような温室でしかない。これを快適にするためにクーラーを使えば相当なエネルギーを消費する事になる。それでも数値性能を高性能にする事は可能だ。

植物や昆虫や、眺めているとあまりに理に適っていて不思議になる。「自然」を目指したり求めたりは、それこそ不可能に近いのだけれど学ぶ事は出来るはずだ。きっと。



以前に設計したこの住宅は、今も私の理想の一つだ。気積は小さく面積は抑えられ、けれど奥行きは長く抜け良い空間はスケール感も優れる。そして、なにより環境性能に挑んだ設計だ。

夏場は庇が陽射しを遮る。窓際にはドマがあり、陽差しは入り込んでもドマまでである。居室は奥、北側にある。室内の明るさは北側高窓が担う。ここまで暑い季節は、庇下に簾を設けて南の窓を完全に覆っても良い。室内側スクリーンでは熱が室内に入り込んでしまうので、室外で防ぐ。

屋根は日射を遮る基本構造であり、窓や屋根、外壁の断熱性能が十分であれば、今時期でも、涼しい夜間に風を通して余剰な熱を排熱し、日射が強くなる時間は出来るだけ閉じて内と外の熱の遮断に努める。清涼な風のあるのが望ましいので、立地には条件があるとしても効果的だ。しかも、この形態工夫は冬に多くを発揮する北方住宅だ。

今頃は沖縄民謡でも聞きながらトロピカルな夏を過ごされているのだろうな・・・