断熱材

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断熱材、これは【 MoAi in ny 】の工事風景より、気密層となるポリフィルム施工前の風景です。断熱材について書きたくなったので、書く。

断熱性能が高くなると暖かい?わけではない。熱的に外の影響を受け難くする事が出来る事になる。それは魔法瓶(今は言わないのかな?)やクーラーボックスと同じ理屈になる。魔法瓶のような中空の真空二重構造の容器なら温かいものは温かく、冷たいものは冷たく長時間保温する事が出来る。

 

例えば、私のアトリエは古い建築で断熱性能がほぼ無い。哀しい。暑くなれば即座に建物は熱くなり、室内へ直接的に熱を伝えてくる。寒くなれば即座に建物は冷え、室内を寒くしてしまう。非常にダイレクトに熱変化を伝えてくれるので、まるで外で過ごしているかの様な自然との一体感を室内でも感じられる。哀しい。余談ながら、熱は建物に蓄熱され窓からの風通しは限られるので結果、熱は籠る。建物が冷えると温まる事はないので壁床天井の全てが私の熱を奪い、冷えは去らず。何れも影響が増幅されている気がする。苦しい。・・・先日まで猛暑は過酷、一気に冷え切ったここ数日は寒く、ストーブ?と本気で思ってしまった。

窓を開けると外気が入るので熱的に影響は大きくなるものの、閉じているなら外の温熱の影響は受け難く室内は快適な温熱環境を維持するように働く。室内を温かくするなら暖房を、冷やすのなら冷房を、断熱性能に応じてエネルギーを加えるなら容易に維持する事が出来る。完全断熱は今の所不可能だと思われるけれど、性能が上がる程に外界の影響を受け難くする性質がある。

夏場に良く感じるのだけれど、温められた屋根の熱が直接伝わるような経験はないだろうか?例えば物置、倉庫などは顕著ではないかと思う。熱せられた屋根鉄板の全面から遠赤外線が強烈に発せられ、まるでサウナか岩盤浴かという具合に熱い室内の経験が、少なからず何方にもあるのではと思う。或いは、鍾乳洞に入った際にひやりとした経験も。

人が住まう、滞在する空間の快適温熱環境に対して、外が+へ、-へと変化する際に断熱材は守ってくれる。決して、暑い日に毛布にくるまっているわけではない。そこは割と誤解があるように思われる。寒いに日に毛布にくるまると暖を感じるのは、自身の発する熱を逃がさぬ状態になるからだ。

空気が実は断熱材の核心だ。グラスウールは繊維の中に空気を多く保持している。昔のグラスウールは薄くあまりに軽く、空気を保持出来ずに動いてしまう事態もあった。暖かい空気は上方へ、冷えた空気は下方へ動く。現代の断熱材ではその心配は軽微だろう。又は、スタイロフォームのような発泡系の断熱材は気泡が多く含まれていて、閉じ込められた空気が断熱効果を発揮する。断熱サッシの2重、3重のガラスは、ガラスとガラスの間に空気を上下へ動き難い薄さで閉じ込めている。空気より断熱性能高い気体を封入している製品もある。発泡系の断熱材には同様に特殊な気体で発泡した断熱性の高い製品もある。

性能の弱い製品を使っても十分な厚さがあれば高性能化が実は可能だ。特殊な気体を使った製品でも密封出来るわけではないので徐々に空気に置換されてしまうので将来まで高性能というわけでもない。考え方によっては無理のない弱い性能の製品をより厚く施す考えはとても有効だ。高性能品を薄く施工するとして、そもそも製品が高価になる。薄いものは安価だとして厚さを増せば量として高価になる。ここは今の所、目標性能を想定してコストパフォーマンスの良い製品を選びたい。

ちなみに、断熱と暖房と換気は一体的に考える。薪ストーブや石油ストーブは熱量が大きい。断熱性能の乏しい環境でも役割を担う事が出来る。高断熱の空間に用いると調整が難しくなるかもしれない。パネルヒーターや床暖房のような輻射暖房は徐々に熱を伝えるのに適していて、断熱性能の高い空間で用いるのに適している。性能の低い空間に使うと熱を発した途端に全て外皮に奪われてしまい、ちっとも暖かくはならないだろう。暖かくなるまで熱を発せさせると燃費が極めて不安になってしまう。補足すると、気密性は現代においては必須になる。隙間から風が漏れて壁内が呼吸するようになると条件は崩れてしまう。室内で酸素を消費する燃焼系の暖房機を使うなら大量の換気が必要になる。排気給気を別に設ける事も出来る。出来れば熱を持った室内空気を逃がしたくはない。熱交換型の換気扇は非常に有効、けれど吸排気が近いとショートサーキットを生じる可能性もあるので設置には注意が必要だ。クールチューブと言い、地熱を利用して長い距離を経由させて給気する方法もあるものの、メンテの不安は残る。室内の形状を良く考慮し、最も効果的な換気が出来る方法を選ぶのが良い。

何故、とうとうと改めて書こうと思ったのかと言えば、やはり、暑く寒かったからに違いない。


高性能が全てに勝るわけではない。寒い家で薪ストーブにあたるあの心地良さに勝る暖かさはない。薪等の燃料調達の手間を惜しまぬのなら、私のアトリエは格別の空間に出来る。省エネ真っ只中の今は、高気密高断熱を前提に少量の熱を伝える方法が、特に住まう空間では最適ではある。暖房器具が暖かいという感覚からは脱していて、室内に寒い所がない!という感覚になる。こうなると、勘違いをして設定温度を上げてしまい、冬でも半袖で住まい始められる方もあるので、要は使い方次第ではある。

夏場、一生懸命に夜は支障のない窓は開放し、ナイトパージと言い、昼間に蓄積された熱を排除するのは有効だ。熱帯夜でも効果は少なくない。風を通す事で室内表面から溜まった熱をさらう事は出来る。果たして、未だ暑い残暑が訪れるのか、一気に秋へと今年は進むのか?どうも快適期間が短い気がしてならない。どのみち夏冬で収支は変わらないのだろうから、もう少し都合良く温熱環境を「外界」が調整してくれたならなー