「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著

ふと、寝る前に読む本をと手を伸ばしたのが、3年か4年前に読んだこの本だった。どんな内容だったのか記憶は曖昧だ。が、面白かった事だけは覚えている。
「生命とは何か?それは自己複製を行うシステムである。」
1953年の短い論文でDNAの二重らせん、対構造の自己複製機構が示されたらしい。

大腸菌ラグビーボールとすると、ウイルスはピンポン玉かパチンコ玉サイズなのだそうだ。小径多孔質の陶板で濾すと細菌は残るけれどウイルスは透過してしまうサイズで、最近は光学顕微鏡で確認出来るサイズで、ウイルスは電子顕微鏡が必要になるのだそうだ。

大腸菌のような細菌は生物で「細胞」がある。細胞はウエットで柔らかい脆弱な球体がイメージできる。対してウイルスは幾何学的或いは機構的な美しさすらある、限りなく物質に近い存在と、記されている。

 

栄養を摂取せず、呼吸もせず、老廃物を排泄する事もない。代謝をしないのだそうだ。しかも、純粋に濃縮すると鉱物の様に結晶化までするのだそうだ。但しこの物質は核酸=DNA又はRNAを持ち自己複製能力がある。ウイルスは細胞に寄生する事で目的を達する。細胞の複製作用を利用して自身の核酸を複製する。寄生された細胞はカン違いをしてウイルスの核酸を複製してしまうのだそうだ。

ウイルスは生物なのか否か?定義は未だ確定しるわけではないらしい。生物で無いなら生死もない。理解を深める上ではタイムリーな本を読んでいたのかもしれない。先日、知人に勧められて見た動画配信での講義、専門家向けでもありウイルスの構造を具体的に案内されていたのだけれど、流石に難し過ぎて追いつけずであった。世の中、理解はどこまで深まっているのだろう?光学顕微鏡では見えない世界が本当に在るのかすら疑わしいのに。

著者は「生命の律動」という言葉で区分を考えておられたらしい。「律動」とはなかなか良い言葉だと思う。人は一般に、対象を見て生物か否かを感じる事が出来る。それを定義する、というくらいに印象の話なのだけれど、いつか明快に説明が出来る日がくるのかもしれない。

この本を再び読み切るかどうかは、秋の夜長に掛かっている。