光明寺設計物語【2015.05.17】はじめまして。

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初めて訪ねたのが今から4年程前の春の頃であった。
既に古く年季を重ねたお寺に出会う。場所は音更町
お寺の建替えを考えているとの事で相談を受けた。
本堂を残すか、残せるのか、建築全てを建替えるか、
まだ事業規模を思案されている頃の事だろうか。

設計ではやはり、「現地を見る」事が欠かせない。
特に「敷地」を知る大切な機会にもなる。
即答出来る事もあれば、悩むべき事もあるし、
まずは相談の内容を吟味しつつ、眺めた。


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お寺には「境内」がある。ここは境内らしきは駐車場と
なっていて広くはない。国道に面して在るものの、
周囲の建築よりも1,2歩下がった位置に本堂が建ち、
低い建物でもあり、気にしなければ存在に気付けない。
現状の国道沿いにあって建てた時とは状況が変わり、
今に至ったのだろうと思われた。

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国道とは反対側に庫裏を含め様々に使われる和室関係の
建物が在った。複雑な屋根をみれば、増築改築を重ね、
今に至った事がわかる。
国道と、直行する町道の2本の道に面する敷地は、四方
からの視線もあり、維持は大変なのだろうと思われた。
実際、綺麗にされていて心配りの様は実に心地良かった。

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本堂の全景。椅子座で使われている。

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御本尊を望む。阿弥陀様の顔が見えないなー
住職に話を聞く事が出来た。
相談を頂いたのは若住職。
樺太所以の阿弥陀様とお聞きする。
お寺は元々樺太に在り、引き上げてきてこの地で
今に至ったものとお聞きした。


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納骨堂。

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そして、これは厨房。薪ストーブが新鮮。
奥に水場があり、手前に造り付けの大きな
作業台がある。


所見の感想は・・・建物の古さを実感する。
考えられたプランではなく、増築改築を経て
至っただろう具合も感じられた。そして、
古くとも丁寧に扱われて居る事も実感した。


お寺となれば、事業総体を考えるのは大変だ。
先ずは本堂、残すにしても現行の構造法規を
満たす改修は難しく、配置を考えると曳屋も
必要になるはず。建替えとしてこれを伝統的な
工法で宮大工を使えば費用は莫大になる。
何より、全体を計画するとなれば、お寺の
内情を心得、どう使うかの勝手を検討する
必要がある。とても安請負は出来ないなーと。
要望を聞いて望むままに描く事は出来る。
けれど、それはしない。
住宅でもそれはしない。
「設計」とは「施主」と「建築」を結ぶ仲介者、
施主の言葉を建築の言葉に置き換える翻訳者、
敷地と相談し、要望を整理し、バランスを図る
調停者でもある。要望のまま勝たせてしまえば、
バランスを欠く事になる。
加えて予算とも相談しなければならない。
優先順位を見極め、最良を求める事に尽きる。
そして、それが良い成果を導くもので有りたい。