初めて訪ねたのが今から4年程前の春の頃であった。
既に古く年季を重ねたお寺に出会う。場所は音更町。
お寺の建替えを考えているとの事で相談を受けた。
本堂を残すか、残せるのか、建築全てを建替えるか、
まだ事業規模を思案されている頃の事だろうか。
設計ではやはり、「現地を見る」事が欠かせない。
特に「敷地」を知る大切な機会にもなる。
即答出来る事もあれば、悩むべき事もあるし、
まずは相談の内容を吟味しつつ、眺めた。
お寺には「境内」がある。ここは境内らしきは駐車場と
なっていて広くはない。国道に面して在るものの、
周囲の建築よりも1,2歩下がった位置に本堂が建ち、
低い建物でもあり、気にしなければ存在に気付けない。
現状の国道沿いにあって建てた時とは状況が変わり、
今に至ったのだろうと思われた。
国道とは反対側に庫裏を含め様々に使われる和室関係の
建物が在った。複雑な屋根をみれば、増築改築を重ね、
今に至った事がわかる。
国道と、直行する町道の2本の道に面する敷地は、四方
からの視線もあり、維持は大変なのだろうと思われた。
実際、綺麗にされていて心配りの様は実に心地良かった。
本堂の全景。椅子座で使われている。
御本尊を望む。阿弥陀様の顔が見えないなー
住職に話を聞く事が出来た。
相談を頂いたのは若住職。
樺太所以の阿弥陀様とお聞きする。
お寺は元々樺太に在り、引き上げてきてこの地で
今に至ったものとお聞きした。
納骨堂。
そして、これは厨房。薪ストーブが新鮮。
奥に水場があり、手前に造り付けの大きな
作業台がある。
所見の感想は・・・建物の古さを実感する。
考えられたプランではなく、増築改築を経て
至っただろう具合も感じられた。そして、
古くとも丁寧に扱われて居る事も実感した。
お寺となれば、事業総体を考えるのは大変だ。
先ずは本堂、残すにしても現行の構造法規を
満たす改修は難しく、配置を考えると曳屋も
必要になるはず。建替えとしてこれを伝統的な
工法で宮大工を使えば費用は莫大になる。
何より、全体を計画するとなれば、お寺の
内情を心得、どう使うかの勝手を検討する
必要がある。とても安請負は出来ないなーと。
要望を聞いて望むままに描く事は出来る。
けれど、それはしない。
住宅でもそれはしない。
「設計」とは「施主」と「建築」を結ぶ仲介者、
施主の言葉を建築の言葉に置き換える翻訳者、
敷地と相談し、要望を整理し、バランスを図る
調停者でもある。要望のまま勝たせてしまえば、
バランスを欠く事になる。
加えて予算とも相談しなければならない。
優先順位を見極め、最良を求める事に尽きる。
そして、それが良い成果を導くもので有りたい。