『一体、何だろう?』の実践例を案内。

お寺で考えた街並みと建築との関係、これは住宅等でも様々に実践をしている。その都度に悩んで今に至るのだけれど、幾つかを案内する。

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【DOMA/道南の家】
道南の田園風景の中に建つ住宅。周辺の農家の家は極めて大きいのだけれど、この住宅は道路から眺めると、人が住んでいるとは思えない程に小さい。実際は小さく見えるだけで、何度も何度も断面を計画し、十分な広がりある住まいを得ている。シンプルな外観故に何だろう?と思われる方も少なくない様子。前に出て誇示するような主張とは正反対の佇まいを考えた。静かな佇まいだけれど、風景と一体化する様を見て取れると思う。そういう生活スタイルを求め得た解答。設計過程も案内をしています。


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【DOMA/yamanote】
札幌市内にある住宅も、小さく作り上げた事例になる。何せ、御両親が建築中に訪ねられた際に「こんなに小さいのか!」と驚かれたらしく、けれど竣工時には室内の広がりに驚かれたと記憶している。実際に訪ねると外観からは自分でも、小さ過ぎるのでは?と不安を覚える事はある。けれど室内には反則的な広がりがある。家は大きいと立派に見えるかもしれないけれど、相対して人が小さく見えるので威圧的で無味乾燥して見えてしまう。お菓子の家は小さい。あれが大きすぎれば立派を通り越して恐怖になってしまう。可愛らしくも心地良く、適切な住宅建築の大きさがあると思う。ここは庭に居ても気持ちが良いです。設計過程も案内をしています。

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住宅事例でもこれは分譲マンションのデザイン事例。前二つとは異なり、大きく作り込み優雅な佇まいのデザインを実践している。どう見えるか、見せるかは要望に合わせて設計をする。吹き抜けの空間にカーテンウォールを使い開放感を得つつ、周囲の建築よりもスケールの大きさを表した。外装には石を使い、その石は叩き仕上げの表情の強いものを使い重厚さを得ている。空間の大きさ、質感の強さや、軽快さや重厚さを組み合わせ、相応しい外観をデザインしている。



建築は『空間』を創る行為です。これがなかなか理解が難しい。例えば写真を撮ると『空間』は写らない。空間は『空』の間に過ぎず、写真には『空』は写らない。精々、壁や床、屋根か天井が写る程度だ。これは外観でも同じ事で、写真には壁や屋根、柱は写るけれど、街並み含めどう感じられるのかは写らない。実際にその建築に出会って初めて感じる事になる。そして、どう感じたのかが本来は最も大切になる。間の抜けた大柄な家は数多くある。それが一般的でもある。そういう家に住みたいだろうか?壁や屋根が希望の材料なら満足を得られるだろうか?少しだけ、素直に感じる事が出来れば判断は変わるかもしれない。何が欲しいのか?理解が出来るかもしれない。出来ずとも深め、要望をする事が出来れば、そういう時にこそ設計は役立てるかもしれない。材料だけの要望ならショールームで選べば済んでしまうだろうし。

子供服も大きければ可愛らしくもなく一般向けになってしまう。
写真では立派に見えても実物は小さくがっかりする事も少なくない。
想像よりも小さくてビックリする事もあるし、その逆がある。

建築も同じ事。工業規格に支配されがちな建築は特に、配慮しなければ工業や施工者の都合で造られてしまう。それが一般的でも要望が出来るなら、適切で相応しい、最適な空間を設計は可能に出来る。そういう設計を志したい。お寺を含め、ここで案内した事例はそういう取り組みです。