【光明寺】『一体、何だろう?』

f:id:N-Tanabe:20190529102602j:plain外構工事はほぼ終了。これはその前、まだ工事ゲートもあるのだけれど写真を撮った。手前は帯広へと続く国道、交通量は多くシャッターチャンスはなかなかない。でも、案外と気に入った写真が撮れた。人が在ると建物の大きさが良く分かる。私の設計したお寺は正面の白い台形の建物・・・この奥に60mを超える建築があろうとは、この写真からは想像も出来ないだろう。


良く見れば正面に自転車に乗る方が在る。建物の幅は自転車3台分程度、高くもなく、住宅としても小さ過ぎる。『一体、何だろう?』という具合が国道から見える。

国道沿いには大きな郊外型のショッピングセンターや大きな看板、賑やかなパチンコ店など様々が並ぶ。敷地の国道に接する長さ宅地二つ分程度だろうか、お寺を主張する建築には狭く、色や形状、大きさで存在を主張するにも十分ではない。どの様な佇まいが適当だろうか?設計ではとても強く悩んだ。存在が消えずに街並みに参加し、この道沿いの一つの風景となれる様、その解答。

設計では敷地模型も制作し、様々なヴォリュームを検討した。大きさや形状や色で主張しては街並みは崩れる様に思われ、としても周囲に埋没し街並みに寄与の出来ない姿も適当とは思われず、存在を示しつつも『調和』を持って街並みに参加する佇まいを求め悩み過ごした。この建築が切欠となるような仕組みを探した。

現地調査では自転車を持ち込み走りもした。国道を走る車は比較的速く、正に車速度で展開する街並みが今の国道の風景だった。歩くと・・・気が遠くなる程に隣が遠い。そこで自転車で走ってみたのだけれど、それでも、数区画向こうは遠く感じられた。ただ、一歩内側に入ると案外に小さな嘗ての街並みがあり、国道の風景とは一変する。それは古地図を調べ理解を深めてはいた。

『旧来に在った街並みのスケールを現在の街並みに投影し一風景を創る。』

簡単に言えば、今の車速度では目に入らないような、嘗ての小さな街並みに在った建築規模で一風景を創る事に挑戦をする・・・簡単ではない?説明が難しいだろうか。
解答は写真の通り、ここを車で通過した際に目に止まるか、どうかで実際に確認が出来るだろう。実際、何かしらの変化は感じられるのではと思う。気になる方は試してみて欲しい。そこにお寺があるから。

この道沿いにある建築の中ではかなり小さな建築に見える。同時に、大きさを示してしまう一般的(左右の建物の窓のような)な窓や扉はなく、大きさの感覚がない。屋根や両袖の壁は大きさを縁取るような設えた。余計な線になる役物など既製品は使わずにすっきりと仕立てている。出来るだけシンプルな姿としているので、それだけを見れば大きく見える風にも関わらず、実際にはとても小さいので、周囲とはスケール感覚が異なり、人の目にはそれが分かってしまう。何とは頭で理解は出来ずとも、違和感というか、違いというか、変化を与えられないか?と考えた。

さて、今後ここの街並みがどう見えるのだろう?少なくとも、ここを歩き走る人には変化を速く感じられる事に間違いはない、はず。街並みに彩りを与えられたならと思う。実際は建築の出来る事は限られる。外構工事で植えられた緑やお寺の掲示板が創って行く事になると思う。結局は人の心、良くしようという善意が生きる。そういう環境を設計が提供できるのか?という挑戦だったのかもしれない。