私にとって特別で、最高のライブが実現してしまう。

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無計画の二次会に一案を思いつき連絡をしたのはプロのJAZZピアニストでもある先輩に、であった。飲み会のBGMで弾いて欲しい・・・とは失礼極まりないお願いにも関わらず、即答で快諾を頂いたのが切欠になる。折り返しで彼の後輩で私の同級、仕事でも技術的な相談をしばしばさせて頂く友人のサックス奏者のリクエストがあった。この会には直接は関係ないけれど同窓、どうにか誘い込み、巻き込み、逃げられなくしてしまった。彼はプロでもなく昨今は吹いてない様子でもあったのだけれど、そこは流石で実際、とても上手かった。更には話が動いた際には確信していたのだけれど、大先輩のフルート奏者にも連絡をした。これも勇気の要る相談だったのだけれど、即答で快諾を頂く事が出来た。会開催の実働は他に幾人もが尽力されていたなか、私は聞きたい一心だったと思う。ライブハウスのママがヴォーカルだと聞き一曲、「You'd be so nice to come home to」をお願いする。ここまでくるとベースがなければという要望にも同窓の縁のある女性ベーシストを加える事が出来た。彼女は少し前に知人のとある会で演奏された方で噂になっていた。動けば様々、縁は繋がるものなのかと驚いてしまう。

幾つかの要望はあったものの、基本は奏者にお任せしていた。その序盤は決めていただろう曲を。後半に飲み会も進み音楽がBGMに徹した頃に、ピアニストに「もう誰も聴いてないので、思い切り行きましょう」と声を掛けさせて頂いた。その様を見てか一度下がられたフルートがウズウズと立ち上がり再び加わりの様々。一番前で聴いていたもので、それはそれは楽しかったですよ。酔って居なければもう少し正しく聴けただろう事は惜しいけれど、楽しかった事だけは間違いがない。ピアノとベースはプロ、しっかりと骨格が出来てグルーブが生まれ、そこにサックスが加わり、フルートが加わり華やぐ。

このピアニストは、学生時代にまだ地下に在った頃のJamaicaに連れて行ってくれた事がある。入れば音しか聞こえない、注文すら口を読んで頂く具合で会話もできないし、そのうち彼は彼で楽しみ始めてしまうし、何で誘ったのか?と疑問だったあの時が私のJAZZ始まりだった。彼は建築を語るように音楽も語る事が出来るだけ十分に理解があり造詣が深い。今も親しくさせて頂いていて帰省された際は一緒したりする。その分かりの良い話を聞けば自分も理解した気持ちになれる・・・のだけれど、残念ながら私は楽しむ程度でしかない。ただ、彼のピアノを聴きたいとずっと願っていた事もあり、こうして先輩や同級生までも加えて聴かせて頂けたライブは素敵であった。


何か企画すると言うのは大変な事。その企画の責任を負う事になり、多くの人を巻き込み、成果を問われる事になる。失敗を恐れるのなら無事無難に何もしないのが良い。けれど、それは退屈だ。で、結局はこういう時はやるべきなだと思う。失敗出来る機会を創り得ては懸命に行動あるのみ。その甲斐あって念願叶う楽しい時間。


そういう取り組みがどこか建築の設計にも通じている様に感じられた。設計するように取り組んだだけかもしれないが。設計も自分にとって安全側に取り組む事が出来る。クライアントの要望に応える設計は在り得る。時に、応えるだけの設計が。考え悩み、こうしたいと思う提案を試み、クライアントと、後に施工者を加え一緒に創る設計もある。自分は後者をこれまで選択しては取り組んできた。何故ならそれは、やっぱり楽しいから。

ライブは余計ではあった。中には、騒々しすぎてと思われた参加者もあったかもしれない。けれど、こういう時は楽しんだ者勝ちだ。例えそれが失敗しても楽しいに違いないのだし、誠実に取り組めば備える術を様々に見つけられる上に、よりもっと楽しい事を探し求めるチャンスすら得る事が出来るのだから、挑戦して創って楽しんだ者勝ちであることは揺るはないのだ。一度自分都合の安全側で取り組めば、考える余地も失い失敗もしなくなるのだけれど、それでは成長もないしね。

余談を続けると、設計で安全側にふれば「終わり」が設定でき暇になる。挑戦すれば「終わり」はなく忙しいばかりになる。無難な二次会開場を選んでいれば、後は会費を設定する程度で終われるので暇になる。それを要望もないのにライブに!などと取り組めば最後まで、開催直前までも緊張を伴い、始まれば周囲の反応に敏感になるし、調子を見ては判断しつつ・・・と言う事は出来ていたはずなので、「思い切って」と告げる事が出来た。そう告げた際の先輩がまた憎く、横目に「いいの?」と目が笑っただけ。そして、鍵盤を叩く指先から加減が消えてピアノが打楽器になって行く。