【 project S寺 】計画⑦ 「空間」断面を見る。

f:id:N-Tanabe:20200922003027j:plain

「空間は断面に宿る。」セクションの検討は最重要だ・・・どれもこれも重要になってしまうけれど。空間とはスケール感のあるもの。プロポーションを検討出来るだけ十分な準備をするのは、外観を整えるだけではなく実はスケール感を作る上で特に重要になる。便利さを求め肥大化で終えた設計では求める事の出来ない次元になる。スケール感を失えば空虚で、質感のない間の抜けた空間になってしまう。

絞った建築を得るには断面を良く検討する必要がある。間違えば得られず、無理すれば唯の狭い場所になってしまう。

Type-Cを想定し平面を計画する際に実は、この断面が浮かんでいた。この断面の当たりがなければ進める事は無かった。そもそも納骨堂は多人数で溢れる場所ではない。精々家族単位になる。どこでどう手を合わせるのかはお寺毎に異なるけれど、そこまでの提案を考え検討を重ねた。

得る空間のヴォリューム、得る落ち着いたスケール感、採光、眺望の具合。換気も適当、暖房はどうしようか?これは後の問い。納骨壇の収まり、訪ね来られた方の必要なスペースの確保、往来の円滑さ・・・叩き台となるこの初案は、そのまま本命案に出来ると感じている。つまり、手応えあり!



建築の中でもお寺は、設計に要する過程は長い。お寺は檀家のもの。檀家皆様の一致した要望が必要で、気運を高める必要もある。予算し、可能な建築規模を策定し、要望を調整し、事業時期を確定し、その上で実施設計を進め、見積を依頼し、施工者を決定し着工する・・・経験上、これは最短でも3年は要すると思う。事業として達成するには一般的には5年計画は覚悟するのだと思う。要望が整理できなければ10年、15年を要しても不思議は無いと思う。他の建築事業とは随分異なる様に思う。

先ずは計画案、事業を進める上で必要なアイディア。実現した際にガッカリしないだけ十分にリアルな設計を「計画」において行った。より適切で相応しい建築成果を求めて。


という事で全7話で「計画」のお話は一先ず終わる。
「計画」の過程としてもわかり易く整理できたと思う・・・話が長いか。でも、デザインがどのような過程を経て得られるのか、一端でも伝えられればと思う。あくまで私の設計スタンスを前提として。

今はコロナ禍でもあり事業気運に大きく影響しているに違いない。果たして先へ進めるのかどうか。無事に。


計画① 計画② 計画③ 計画④ 計画⑤ 計画⑥ 計画⑦