タイル

建築において『タイル』は重要な仕上材だ。ただ、高価な仕上材でもある。設計では想定するコスト帯で常に最善を選ぶ。選定はとても慎重に行う。カタログは今はネットでも眺められるものの、質感は実物で確認する以外に確認する手段がない。写真などなんて信用のおけないものかを実感させられる仕上材。

基本はサンプルを取り寄せるのだけれど、さて何か探さねば!という時はショールームを訪ねる。ただ、札幌でまともに眺められるショールームは実は殆どないので、いつもい使う場所はとても貴重だ。

ローコスト設計では選択肢はそもそも限られるので、より慎重になる。高コストなら当然、慎重に選ぶ。時に大判を切り分けてボーダーにして使ったりと工夫もする。タイルは基材の上に綺麗なプリントされたものもあれば、基材にテクスチャーを与えて風合いを作るものもある。切る場合は小口が重要、濃色を選択しても基材が白系なら使えない。そして重要な事に主に靴で歩く場所に用いる事がおおく、滑るか滑らぬかが問題になる。浴室も同じ。濡れた足、雪の付いた靴で滑るなら使えない。今は同種でもグリップ加工の施されたものもラインナップが多い。ただ、グリップが効きすぎるものは掃除もし難いし、ストッキングなら破れてしまうかもしれない。

欲しい表情だけで悩ましいのに、安全性や利便性が備わるかまでを考えると選択肢は狭められてしまう。なので、出来るだけたくさんを見る様に務める。

今回は、少し前の事になるのだけれど、コストを掛ける設計に相応しい製品はないかと品定めに訪ねる。今はまだ実施設計、選定はしないものの単価を押さえる必要があり、どの価格帯の製品に出来るか、見せて頂いた。ああでもない、こうでもないとショールームの方に小一時間お付き合い頂き、実物の確認とカタログに付箋貼、スマホでだけれど写真をと集中する。その時に撮ったものをバラバラと貼る。

 

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左手の製品はこの設計の落しどころになりそうで興味深く何度も確かめ基準にした。右手のものはまるで大理石だ。使われる場所が床ならかなり過酷な使用に耐えるのに、プリントの技術はここまで進んでいる。写真なら大理石にしか見えない。実際、使ってしまおうかな?と思うくらいに綺麗だった。人工照明だけの店舗なら使う事を躊躇わないと思う。自然光を大切にする建築で使うかは分からない。

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これも綺麗だった。床用のものは、今は多くがノンスリップ加工も製品にあるので選定条件は有利だ。

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セメント調の仕上のタイルは充実している。価格の違う製品を一堂に並べて眺める。かなりカッコが良い。壁に使うならモルタル左官に挑戦したくなるけれど、捨て難いタイルを見つけた。質素なモダンな佇まいなら最適だけれど、今回の設計に適当かはクライアントとの相談になるだろう。今回使えなくとも次がある。覚えておこうっと。

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現物を見て、その質感が良ければやはり魅力を感じる。色違い様々を眺める。

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新製品を案内頂きつつ眺めつつ、もっと質感を、申し訳ないけれど安価なものを、こういうイメージで・・・あれこれ直接尋ねては製品を見せて頂き、その質感から想像している空間にリアリティーを得て行く。