マンションのデザイン その③

★条件3.【道路との関係】
片側2車線道路という大きな道、交通の流れが前面道路となる。その通りから直接的に玄関ドアがあると、何ともあずましくない。出掛けが直接的に道路面とは唐突過ぎる。ドア一枚で公私を区分するのは実に危うい。

計画の状況から、しかし引きも無く直接的に道路から建物に入ってしまう。どうしよう?
敷地境界に操作を考える。その一案は「壁」だ。壁なら薄く済む。おまけに敷地の道路側全面に設けるなら長く設置が出来る。つまり、壁を潜ると玄関に出会う構図だ。壁一枚であっても、無ければ吹き曝しで道路面と面するのに、一枚壁を潜る行為があれば、敷地に入った時点で「領域」を区分する事が出来、帰宅や出かける際に必要な心象変化を得られるだろう。


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敷地は勾配しているので、実際には高低差に呼応して整える必要があるのだけれど、先ずはバラバラと切り絵の如く壁を設ける。

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巨大な建物の前面に設ける低い壁、これは人のスケールに近い事もありスケール感を落ち着かせる事が出来る。巨大な建築は遠くからの見え方、近くで人と接する様、どちらも考える必要がある。

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敷地境界に重々しい壁を立てる事も考えた。あまりに敷地に余裕がなく厚さの確保が悩ましい。壁で仕切るのではなく、重厚な壁で隠す考え方だ。

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壁なら自在、照明を組み込む事も出来るくらいに。夜は明かりが灯る。人の目線で変化を促しつつ、距離は変わりないものの玄関ドアまでのアプローチを築く事が出来る。

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全景で眺めたなら、それなりの光景でもあり、周辺とはヒューマンスケールで呼応が出来る。