ドラマのシーン

朝ドラの一シーン、これが何度か出てくる。ヒロインのお姉さんの旦那さんは長男で本家は強いシキタリがあるらしい。女が働くとは何事だ!という具合に。何とか認めて欲しいと、祖父や父の面前で体を小さくして頭を下げているのが旦那さんになる。


一般には居場所は逆ではないだろうか。主人が奥に座り、訪ねて来る者は縁側から入る。この家で逆にした場合、さほど広くはない室内奥の暗がりに祖父ら3人を座らせるよりも、光る外を背にして座らせる方が威厳を象徴出来る。しかも、軒が低く落ちているので空間の重心は低く座った人が大きく見える。外の光景は映画のスクリーンの様に輝いてもいて、室内奥の暗がりで(映像では手前で)旦那さんが体を小さくすれば、より効果的だ。

もっともこのドラマでは、この後に祖母が登場して一蹴されてしまうんだけれどね。



黒澤明の映画だと、そういう作られたシーンが随所にあって記憶に残るものが少なくない。ドラマでも、時々そういう印象に残るシーンがある。威厳を強調する演出が常識とは違うように見えても映像に説得力を与えられるなら、それは面白い。

実は設計の際にそういう印象に残るシーンを参考にする事がある。どういう空間でどのように光を得たなら具現出来るのか?試行錯誤の末に創る事がある。

映画を書き出そうかと思ったのだけれど、三日三晩書けそうなので諦める。でも例えば身近な事例と出来る一つは『寅さん』の「とらや」だろう。おそらく四畳半の居間に時には寅さんを加えて6人、ヒロインを加えるなら7人が食卓を囲む。この居間はキッチンのある土間、お店、奥の和室、それに庭への窓がある。空間は限定されているけれど閉鎖空間ではなく四方に他室がつながり閉塞感はない。その上で小さなスペースに家族が集う光景なら、人情物語が広がるに十分な舞台となる。実は縄文時代の住居とされる竪穴式住居の一般的なスペースも近いスケール感になる。家族が集う時に最適な空間の大きさは、1万年くらい変わっていないのだと思う。
洋画にSFや古い映画に実体験を加えて語りだすと・・・整理出来れば何れ書き記したい。