稀な空模様。

先日は夕方の事、アトリエでPCに向かっている際に室内の色が変わったのに気づいた。気付けて良かった。正にコレ、稀な空だ!とカメラを持って屋上に上がる。


夕立前の空、低く、けれど薄く濃いめの雲が垂れこめている。空の全てではなく青空を残している。


向かいの学校、普段はレンズを向ける事はないけれど、失礼して撮る。夏休みは職員室?のみに灯る蛍光灯の青白さが、セピアの世界で異質な空間のよう。


夏時期に稀に起こる特有の空模様だと思う。夕立のようにさーと雨が降る直前、直後の空模様が気になるようになって久しい。ただ、出会うのは極めて稀で、気付くこと自体が稀なだけかもしれないけれど、見逃すには惜しい特別な『光』がある。まだ、解析できていない。

雨を降らせるだけ十分に湿気のある重く濃い雲が薄く低く、空の3/4程を埋める。陽射しが色を帯びるだけ十分に長くなる夕暮れか朝に、このセピアの世界が生まれる。

明るさの残る空があるので周囲は十分に見通せる。その直前直後の晴れわたる空に比べ相対的に薄暗く見える程度の事。この空が世界から色を奪いセピアに染める。空に残る青さや蛍光灯の青白さが残す色は不気味なほどだ。



これは5年前の9月初めの事、早朝の出来事。


うす暗いのだか明るいのだか分からぬ、色を失ってセピアに広がる光景があまりに印象的で、こういう色味で陰影の深い写真を撮る人があったはず。白黒写真のようだ。


世界が空模様一つで特別な光景に見えるのだから、面白い。

これも日常なのだけれど、普段との違いが特別感を与える。『光』の明暗、光明を建築空間に再現する事に取り組んで来た。色味にまでは未だ及んだ事がない。こんな空も実現出来るのだから、建築空間でも再現が出来るのかもしれない。スタジオの舞台セットなら色着けた照明で解決するのだろうけれど、自然光を相手にする建築空間で出来る事るのだろうか?出来たら日常に特別なシーンを導く事が出来るのかもしれない。


絶妙なバランスなのだろうと思う。青空の方が多ければ、色を失わず明るいまま。雲が多くを覆ってしまうなら、ただ暗いだけに違いない。雲が厚くなれば空は光らずに暗く、雲が高ければ光が回ってしまうので明るいままだろう。

再現できるなら例えば、エントランスの空間をセピアの世界に出来れば、次の空間で出会う色は新鮮に見えるに違いない。逆にエントランスに強い色味を与えてリビングをセピアに落ち着かせる事も出来るかもしれない。スケール感や光の加減で再現してきたのと同様の事を、『色』でも可能なのだろうか?実に興味深い。

問題は、稀にしか起こらないので再現出来るだけ十分な観察の出来ない事だなー