トリスタン・ツァラ邸


トリスタン・ツァラ邸をGoogleマップで見つけた!

装飾は罪!の如くの言葉が印象深い古の建築家はアドルフ・ロースによる住宅はモンマルトルにある。とある機会に探してみて、Map上に見つけたので記して置く。

私自身は随分昔に訪ねたパリの夜にモンマルトルを歩き、導かれてどこぞの小さな教会のミサに参加させて頂いたりと楽しく過ごしたのだけれど、フラフラ散策をしていて偶然に出会ったのが、この有名な建築史に残る建築だった。

たしかに装飾の無い様にアドルフ・ロースの建築だと直ぐに確信できた。彼がウィーンで設計したロースハウスは過去に何度か書いた気がする。

所謂『装飾』はなく不愛想に見えて実は、極めて可愛らしい建築だ。なぜ周囲とは違い可愛らしく見えるのか?しっかりとデザインされているからだ。

何をデザインしたのか?装飾たるものをではなく、空間をデザインしている。これは極めて建築家的なアプローチで達した成果で、私に勇気を与えてくれるだけ十分な存在だった。具体的には何をデザインしたのかを問われれば、それは『スケール感』だと言える。

周囲と違って見えて当然なのだけれど、3階建程の高さで統一された町並みに対して、この建物は窓の具合から5階建に見える。にも関わらず石積の基壇部分と漆喰塗の上部の2階構成で仕立てている。

ズルいよね。3階建ての町並みに5階に見える佇まいを2階に見える仕上で仕立てたのだから。何と言うか、装飾どころでなく思いっ切りデザインを施しておいて装飾は罪だとか言い出すのだから。表層や小手先を飾った程度の建築ではとても太刀打ちできず、並ばされると均質な背景に貶められてしまう。そう躾けて自身の建築を際立たせている。

夜の暗がりに見つけても明らかな存在感で、何がそう仕向けているのか?確かに無装飾と言えるに十分に質素に振舞いつつも狡賢いデザインで、それはスケッチを描き過ごした中で自分なりに理解する事が出来た。この理解が正しいのか?それは誰にも判別は出来まい。と言う事はつまり、面白かったという事に違いがない。

そんな驚きに出会う機会は極めて稀だ。学生時代にロースに興味を持ち本を読んだ事もあるのだけれど、実感せずでは理解は出来ず既に出来上がった評価を知るのみで実はそれでは参考にもならない。間違うと、無装飾を良しとして退屈な建築を求めてしまう可能性すらあるかもしれない。

人の感性は面白い。評価されたのは当時、今の様に誰しもが直ぐに綺麗に整理された情報に出会える環境ではなく、実際に見た人が「おおっ!」と驚いたからに違いない。それが面白かったからに違いない。実際、驚かされたし面白かったですし。どこかに在ると知ってはいても探しては居なかったのに、偶然にも見落とさずに出会う事が出来る程に明らかなデザインが、そこにあった。

或いは今は、簡単に名建築も地図上で知りストリートビューで眺めて満足させてしまうかもしれない。けれど、実際に出会えばどうだろう?建築は写真には写らない。これは確信だ。実際に空間を体験した人にしか楽しさは伝えられない性は昔と変わらない。建築が面白い理由です。

ちなみに、この建築が安価だとは思わないのだけれど、私は安価建築を設計する際に・・・何時も諦めそうにはなるのだけれど奮い立たせてスケール感に挑む機会が多々だった。高価だけれど感じる事の無い建築は多いのだけれど、実感のある建築に出会う機会は稀だ。『空間の妙』は揺るがない。