ガレージ・珈琲

アトリエの下には車庫がある。カッコ良く『ガレージ』と・・・唯の『物置』とも呼ぶべきかもしれない。ここは古い建物で車庫とは言っても奥行きは4m少々しかない。小さな車が好きな私には何とかなっているものの、歩道の切り欠きも一台分で電柱のもあるので本当に小さな車を詰め込めば3台分のスペースなのだけれど、本当に使い道のないスペースは物置にしかならない。

ある友人の実家の物置に、その方の母親の和裁用の裁縫台が残されていた。既に傷だらけでドロドロに汚れていたものを譲り受けたのは随分前の事だった。数年前の事、思い立ち洗い磨いてみた。本当はやすり掛けをもう少し頑張り汚れを削り落とすつもりが、すっかり滞ってしまっている。綺麗にして塗装してしまいたいのに、ここらで塗装保護してしまおうかで悩み、結局はそのまま、物置的スペースの中央に置いている。

車が一台、自転車と除雪道具等のあるスペースに余白を作り、その中央に置いた裁縫台は割と様になっている気がする。キャンプ用の椅子を置いてあるので、ふと、そこで寛いだりする。シャッターを開けると見えるのは町中の喧噪、昼間なら隣のお店へ来た人が平然と車庫前に路駐した光景と、良い風景は望めないものの、シャッターなので風が少しでも強ければ土埃が入り込むし、今日なんか桜の散った花弁?が多数。清掃を心掛け整然と出来れば、それでも割と落ち着ける場所にはなっている。

自分に車やバイクを弄る趣味があるなら、良い場所なのかなーと思う。今はタイヤ交換やワックス掛けはするものの、余剰スペースを物置として埋めずに残し、この裁縫台を置く事で何とか、街中の景観か雰囲気を楽しめる場所にと思っている。


暖かな週末、知った友人がお昼ごろに突如、自転車で訪ね来られた。「ちょっと」と言う時には丁度良いかもしれない。水と珈琲豆に何時もの珈琲セットを持ち込めば、そこで湯を沸かし淹れガレージ・珈琲が提供出来る。

本来の目的からは外れるけれど、裁縫台は今は立派な場所を担っている。軽量なキャンプ用のテーブルではなく、重く確かな「板」があるだけで、一時を過ごす事が出来た。唯の物置なのにね。

近所に来られた際は当然ながらアトリエにお通しさせて頂きますが、「ちょっと」なら、路面のスペースか空間の大きさ、重い板の作る空間の重心を観察する意味で興味深いかもしれない。珈琲、淹れます。