春先にカツラを眺める機会はこれまで経験がなかった。木の中では初めて興味を持ち、それ以来特に好きだったにも関わらず、全く何も知らずに居た。控えめな木肌は木材としても割と好きだ。
ただ、古めかしいと勝手に思い込んでいるわけだけれど、洗練さはあまり感じていない。素朴さ、朴訥さ、武器用さを感じるのだけれど野生的ではない。その葉と枝の機構は昆虫的で生命感の強さを感じる。
枝から対に上向きに葉柄が立ち上がり、円い葉が垂れ下がる。枝の両側を覆う円い葉のリニアな構成がたまらない。真っすぐに伸びる枝は、恐竜の骨か船の竜骨(キール)を眺める様な迫力がある。他の木ではあまり見かけない姿は印象的だ。
春先の一群が開き終わる頃、枝も太く強くなっているのかもしれない。先端は更に二股に分岐して伸び始めている。対であり、二股であり、分岐して展開するのがルールの様だ。
ナナカマドは葉群が枝と一緒に用意され、一気に伸びる。紅葉かカエデのグループは枝先から二股に分かれて葉を付ける。カツラは枝から葉が直接生える。
先端の小さな丸がある風景、大木なのにこの可愛らしさ。
葉は既に十分に広がって見えるけれど、先端が更に進む気配はない。今年、この枝が十分に太く強くなれば、来年は先端が伸びるのかもしれない。
綺麗な仕組み。
葉と枝の関係は、何かのプランのように見えてしまう。
見上げない限り、葉が茂る枝となるカツラ。
朝の低い陽射しがこのような光景を魅せる。小さな面が幾つも重なり多重の陰影を作る。晴れの日に早起きした時は、また見に行こう。