【 オンネトー 】 その③


一頻りオンネトー湖畔の散策を楽しんだ後に野中温泉を訪ね、私は露天で小一時間を過ごした。翌日にも体から硫黄の匂いがする程の温泉、私好みに硫黄臭は欠かせない。最近はその後に再び湖畔へ向かい雌阿寒雄阿寒の山を眺められるポイントにカメラを構え陣取る。暮れ暗闇に沈み消える湖畔を眺めるのがたまらなく好きだ。

本当はそこでコッソリと珈琲を淹れるのだけれど雨と侮り用意せずに訪ねたのは心残り。

けれど山々は結局は姿を現さずに景色は闇に沈む、その直前の風景。重い雲は低く垂れ込め流れは早く、湖面は風に吹かれて小刻みに波立ち鏡面には程遠い。湖畔から連なる森は降った雨が、未だ温かい地表で蒸発するのか、そちこちで煙のように立ち昇る。



カメラ任せでピントを合わせると、高性能なはずのカメラが戸惑い・・・どこに合わせてシャッターを切らせたのか?と問いただしたい。くらいに既に暗いのだけれど、現像すると明るく見える。

当然ながら撮影の集中力を解いて振り返ると既に、後ろの森は暗闇だ。



そこで眺める全景、山々は雲をマフラーの様に纏い伺える程度に聳えていた。薄暮の瞬間は、雨の曇り空でも来た甲斐を覚える。写真では伝わらないとしても、あのスケール感は素晴らしい。体で感じる空間は他に代え難い。それは野中温泉の硫黄の匂いが翌日にも感じられるの似て、空想の中ではこの空間体験を一年は保つ事が出来る。あまり時間を置くと美化し初めてしまうので来年も、出来れば何度か訪ねてたい。

月がなく、風がなく、満天の星夜にココに居たい。



オンネトー
【 オンネトー 】 その①
【 オンネトー 】 その②
【 オンネトー 】 その③
【 オンネトー 】 その④
【 オンネトー 】 その⑤