オンネトー その④【計画の検証】

先に記した管理棟の建築(⇒過去記事へ)、図面はあるので、当時は何を考えて計画をしたのか?振り返る。遥か以前の設計検証は怖いけれど、良い機会に違いない。


当初の敷地はこのような具合。以前の記事に載せた写真は図面左側から撮ったもの。人は図面右上からやって来る。キャンプ場は左下の広範囲です。


これがトイレであった。雰囲気として、周辺がトイレになる。必要な施設だけれど、間違うとキャンプ場の雰囲気を壊してしまう。

設計要件は「公衆トイレ」と「管理室」。トイレは男女別かつ多目的トイレと管理室。管理者は常駐でキャンプ場の集金や保守を行う。さらに展示室も当初は設けていた。

『設計趣旨』は記されず、設計者が考える事になる。つまりコンセプト・メイクは設計の仕事。要望のみの設計が常、飾り立てるような設計も一般的には多い。建設場所に相応しい建築を考える事、出来た建築は極めて少なく、挑めば難解に違いない。


建築を「駐車場」と「森の中のキャンプ場」を区分するよう配置した。さらに考えたのは、出来るだけ目立たぬ事。本当は隠してしまいたい。折角、山の中の国立公園を訪ねたのだから、躍り出て来る建築は煩く余計だ。背景に馴染み気に障らないのが良い。ここでは、日常たる「駐車場」自体を隠すための「壁」にしてしまえ!と考えた。

建築の床面積の2/3はトイレなのだけれど、これは奥に隠して出入り自体を見せない工夫は既に記した。駐車場(右から)からはスロープを使いバリアフリーに、キャンプ場(左側)には要求にないデッキを屋根下に設けた。

建物の正面を駐車場側に向けて迎賓的に「ようこそ!」とか、「いらっしゃいませ!」的には振舞わず。それは余計なお世話の最悪な設計に違いない。


駐車場はココ。この駐車場を森の中のキャンプ場のみならず、湖畔に広がる景観から遮るように建築を配置している。


建築を領域線としてキャンプ場はこちら側。湖畔は図面の直ぐ下に広がる。意図的に人の流れを制限してゲートとなるよう意図している。管理上は人の流れが制限出来るので容易にもなる。


断面的に検証をする。敷地はキャンプ場、湖畔側へと傾斜する。登山口でもあるので敷地と周辺は起伏に富む。


右手が駐車場、ここに来る人がまず訪ねる場所となる。そこは車もあり、便利で雑多な日常世界が広がる。


傾斜する左手がキャンプ場、或いは湖畔を散策する散策路の始まり。ここに「日常」を持ち込まない事、紛れ込ませない事が肝心だった。建築の奥は山、手前が湖畔。

もしも建築を、正面を駐車場に向けて迎賓的に振舞えば点となり壁にはならない。以前のような駐車場とキャンプ場が紛れ雑多な日常が景観を覆ってしまう。綺麗な建築なら?インスタ映えはするかもしれないけれど、実際に訪ねるとガッカリする事になる。ちょうど昨今出来たアウトドアショップがこの構図。山の中の国立公園を訪ね、これから登山かキャンプを!という時にコンビニエンスな佇まい・・・商売優先なら景観を壊してでも目立ち繁盛が優先される。けれど、それはココでは邪魔ものでしかない。流行り廃れのファッション、便利さはココに必要な価値とは無縁だ。



駐車場からはこの具合、開かれた場所に、元々の丘陵の稜線を再現するように建築を計画している。


キャンプ場からの眺め。管理棟は優しく人を迎え入れるようには設えていない・・・けれどウッドデッキが前面にあるこちら側は適度に人と交わう。入口が奥にあるので気付かないだろうけれど実は過半がトイレの建築なんだけれどね。


ここに記した事が本当か?これは実際に訪ねて空間を体験した人にしかわからない。建築の可能性、出来る事を知りたいと興味を覚えたからは是非、訪ねて見て下さい。国立公園足る美しい光景が広がります。

 

⇒オンネトー その①【管理棟建築】
⇒オンネトー その②【湖畔の風景】
⇒オンネトー その③【景観破壊】
⇒オンネトー その④【計画の検証】