【 オンネトー 】 その②


奥のキャンプサイトには管理棟がある。建築を越える俗世間から切り離され深い森と出会う。通路状の道が遠くまで傾斜し続く。その中央にはカツラの木がある。既に随分と高木なのだけれど、未だ大木ではなく若い。私の数世代後には立派な木になるのだろうなと、思う。

暗い森は、既に落ちたカツラの葉が地面を埋め、そらがあまるでスポットライト浴びたステージのよう。

 


幹は未だ細い。細いけれど枝は長く伸びて空を埋め、殆どが落ちただろうに未だ曇り空でも輝いている。


森の中では強風は吹かないからなのか、葉は真下に多く積もる様だ。色付いた葉を纏く紅葉を眺めるのも良いのだけれど、その色付いた葉を地表に積もらせた光景も、悪くない。雨の中、来た甲斐がある。

秋は、春程に暖かいけれど日は圧倒的に短い。6月なら7時でも明るいのに、秋は4時を回ると暗い。日照時間が短くなると、光合成で栄養を作る「葉」を維持する方が困難となり、そう判断すると縁を切る。葉緑素が失われる?と葉から緑が消え色がついて見える・・・のかな。冬を前に、葉を帯びていれば雪風に耐える必要が生じるので、負担を軽減するために葉を落とす。つまり落葉、カツラは中ではかなり古いタイプなのだと思う。ひたすら小さな円い、或いはハート型の葉を無数に纏う。



東屋で雨宿り、珈琲はココで頂く。


何の気なしに撮った一枚は、ナナカマドだった。この春にかなり楽しんだ木だ。世間一般には、街路樹などで便利使われるか、紅葉の時にだけ重宝される。カツラに比べると遥かに洗練された上に柔軟に葉の数を調整するシステムまでを備える木、でも割と地味で慎ましい。私の興味はカツラに次いで高い。

製材された「木」は仕事柄選ぶものの、生きた「木」は実は殆ど判別が出来ません。表皮を剥いで中の文様を・・・自分には未だ想像が乏しい。比べるとなるほどーなと思えるのに。

カツラの木は、以前に老練な建具職人に額を作って頂いた事があり、それは今も使っている。ナナカマドは建材では聞いた事が無いので、その用途では難しいのだろう。

などと空想を巡らせていると雨が上がる。傘を差さずに歩けるのはありがたい。




オンネトー
【 オンネトー 】 その①
【 オンネトー 】 その②
【 オンネトー 】 その③
【 オンネトー 】 その④
【 オンネトー 】 その⑤