たたき台となる計画を先ずは考えた。
一気に答えを導くには情報が少な過ぎる。
打合せをするにも何かしらが必要になる。
敷地は公図、測量図から起こしていて、
実寸を理解しつつ先ずはゾーニングを始める。
同時に所要室を把握するべくプランする。
当初はS(鉄骨)造を基本として考えた。
RC(鉄筋コンクリート)造とするにはコストが
追いつかない。S造でもコストは厳しく、
建築可能な面積を逆算し、考える規模と内容を
想定し作製する。
一般的なお寺を想定すれば坪単価は上がる。
最低限度を想定した規模にて考える計画案は、
今後を考える上での参考となるもの。
敷地をどう使うか?
これは設計の命題になる。解答へは道程遠く、
この時点ではイメージのみ。先ずは所要室を
確認し、規模策定を実務的に進めている。
設計も事業によってはこの段階で答えを探す。
けれど、心ある建築を考えるには答えは焦らない。
急かしても良い成果は得られない。
答えを得る為には熟慮は絶対に欠かせない。
計画では基本となる断面を想定した。下図がそれ。
ヴォリュームを抑えつつ、2層で考えたプランは、
本堂を半地下にして居室高さを確保しつつ考える。
伴い立面も考えてみる。割と行けそうな予感も。
図面の日付を眺めると、ここまでが17.02.10。
17.02.07に図面作製に取り掛かり至る。
※図面の公開はしません。縮小画像にての案内。
17.02.14時点で平面はもう少し理解を進め、
諸室のヴォリュームをおさえた絵からは
より具体的に至っている。
17.02.18時点で更に考えを進める。
想定した居室は全て最低限度ギリギリで納めている。
コストで割り返す規模に余裕がないのは明白だった。
このプランでは、その前のプランに対して、
図面上の北側に淀みと出来るスペースを用意している。
詰め込んだプランには余白が乏しく行き苦しさがある。
この段階では合理的で効率的に組み立てた際に、
どこまで最小限に収められるかを試している。
余白となる部分を用意できるのかは試す必要がある。
余裕のない建築は、それが合理的であればある程、
楽しい間を失う事と同義でもあり、悩ましい。
庫裡部分は割と今見てもまとまっているように思う。
好みのドマを介して外と繋がる婉曲的な様は、
お寺にあって人の住まう間としては適当と感じていた。
コンパクトに二世帯を納めつつ、吹き抜けやドマを
用いて広がりもあり、適度な一体感とプライベートを
確保出来た様は、良いなーと思う。
良いなーとは、自分が住めるという基準かもしれない。
自分で住むことが出来ないと思うものは提案出来ない。
もちろん、提案や実現までにはクライアントの要望を
理解し、成り切って考えるだけ十分にと取組む。
住まえるだけ十分なリアリティを計画の際に創れなければ、
現実に住まうのは難しいだろうと思う。
カッコ良く出来ても居住に耐えられない様ならば、
インスタ映えするだけで終わってしまうし。
最も悩んだのこの敷地。この敷地には最後まで悩まされる。
お寺は苦しい時期もあったらしく、敷地を文筆したらしい。
決定的な事を言えば、オセロで例えると既に3つの角が
取られている。決定的なハンデを負った敷地だった。
下は角地一体だったものの、経た結果は3つ角を失い、
攻めきれない歪な形状が現状だ。どう建築を納めても、
敷地を有効に使い切れそうにない。
特に、高価なS造とすれば所要室を納めるには総2階の
規模にせざるを得ず、敷地に対しては小さすぎ、建築が
敷地を使い切る事が出来ない。
何とか整えてみたものの、今後、この敷地と対峙する
事はこの時によくよく理解が出来た。
住宅は最もシンプルで素直な建築となる。
機能や要望の多い規模の大きな建築ではまず、
敷地をどう使うかのゾーニング、建築の内容を
更に配分する計画、その中に楽しさを見出せるか、
創る余地をどう獲得するかを思案する。
堅実さと冒険をどう両立させるか?悩み始める。
計画に取組めば問題を様々に実感を伴い思い知る。
・・・この時点では寧ろ、絶望を実感していた。