光明寺設計物語【2017.02.07以降】思索を試みる。

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たたき台となる計画を先ずは考えた。
一気に答えを導くには情報が少な過ぎる。
打合せをするにも何かしらが必要になる。
敷地は公図、測量図から起こしていて、
実寸を理解しつつ先ずはゾーニングを始める。
同時に所要室を把握するべくプランする。

当初はS(鉄骨)造を基本として考えた。
RC(鉄筋コンクリート)造とするにはコストが
追いつかない。S造でもコストは厳しく、
建築可能な面積を逆算し、考える規模と内容を
想定し作製する。

一般的なお寺を想定すれば坪単価は上がる。
最低限度を想定した規模にて考える計画案は、
今後を考える上での参考となるもの。

敷地をどう使うか?

これは設計の命題になる。解答へは道程遠く、
この時点ではイメージのみ。先ずは所要室を
確認し、規模策定を実務的に進めている。

設計も事業によってはこの段階で答えを探す。
けれど、心ある建築を考えるには答えは焦らない。
急かしても良い成果は得られない。
答えを得る為には熟慮は絶対に欠かせない。

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計画では基本となる断面を想定した。下図がそれ。
ヴォリュームを抑えつつ、2層で考えたプランは、
本堂を半地下にして居室高さを確保しつつ考える。
伴い立面も考えてみる。割と行けそうな予感も。

図面の日付を眺めると、ここまでが17.02.10。
17.02.07に図面作製に取り掛かり至る。

※図面の公開はしません。縮小画像にての案内。

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17.02.14時点で平面はもう少し理解を進め、
諸室のヴォリュームをおさえた絵からは
より具体的に至っている。

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17.02.18時点で更に考えを進める。
想定した居室は全て最低限度ギリギリで納めている。
コストで割り返す規模に余裕がないのは明白だった。
このプランでは、その前のプランに対して、
図面上の北側に淀みと出来るスペースを用意している。
詰め込んだプランには余白が乏しく行き苦しさがある。
この段階では合理的で効率的に組み立てた際に、
どこまで最小限に収められるかを試している。
余白となる部分を用意できるのかは試す必要がある。
余裕のない建築は、それが合理的であればある程、
楽しい間を失う事と同義でもあり、悩ましい。

庫裡部分は割と今見てもまとまっているように思う。
好みのドマを介して外と繋がる婉曲的な様は、
お寺にあって人の住まう間としては適当と感じていた。
コンパクトに二世帯を納めつつ、吹き抜けやドマを
用いて広がりもあり、適度な一体感とプライベートを
確保出来た様は、良いなーと思う。

良いなーとは、自分が住めるという基準かもしれない。
自分で住むことが出来ないと思うものは提案出来ない。
もちろん、提案や実現までにはクライアントの要望を
理解し、成り切って考えるだけ十分にと取組む。
住まえるだけ十分なリアリティを計画の際に創れなければ、
現実に住まうのは難しいだろうと思う。
カッコ良く出来ても居住に耐えられない様ならば、
インスタ映えするだけで終わってしまうし。

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最も悩んだのこの敷地。この敷地には最後まで悩まされる。
お寺は苦しい時期もあったらしく、敷地を文筆したらしい。
決定的な事を言えば、オセロで例えると既に3つの角が
取られている。決定的なハンデを負った敷地だった。

下は角地一体だったものの、経た結果は3つ角を失い、
攻めきれない歪な形状が現状だ。どう建築を納めても、
敷地を有効に使い切れそうにない。

特に、高価なS造とすれば所要室を納めるには総2階の
規模にせざるを得ず、敷地に対しては小さすぎ、建築が
敷地を使い切る事が出来ない。

何とか整えてみたものの、今後、この敷地と対峙する
事はこの時によくよく理解が出来た。


住宅は最もシンプルで素直な建築となる。
機能や要望の多い規模の大きな建築ではまず、
敷地をどう使うかのゾーニング、建築の内容を
更に配分する計画、その中に楽しさを見出せるか、
創る余地をどう獲得するかを思案する。

堅実さと冒険をどう両立させるか?悩み始める。
計画に取組めば問題を様々に実感を伴い思い知る。
・・・この時点では寧ろ、絶望を実感していた。